12話 消えた魔法少女
「御剣島沖に急激な魔力反応。派遣した魔法少女三名、戦闘に突入した模様。繰り返します、魔法少女リリス、アリーナ、ミルキーの三名が戦闘に突入した模様!」
「それで、相手はモンスターか? それとも、アンティークマジシャンか?」
魔法省事務次官、榊原は部下からの報告を聞き、すぐにどちらと戦闘になったのかを確認した。相手がモンスターであれば、異界の門が開いた可能性が高いからだ。
「三人とは別に類似した魔力エネルギーが複数、おそらく新人の魔法少女と御剣の者と考えられます」
「ちっ、見つかったのか」
月野が新人魔法少女を御剣島に向かわせたとの情報が入ったため、急ぎ首都にいる三名を向かわせたのだが、門が開く前に知られてしまったらしい。全く面倒なことだ。
政府にとって、二つ目となる異界の門を開くことは長年祈願していたことだった。門から出てくるモンスターは恐ろしい強さを秘めている。だからこそ、今までは魔力溜りを発見してはいち早く潰してきた。
しかしながら、魔法少女の数も徐々に増え、ドロップアイテムによる武器強化が進んだ今であれば新たな門を増やせる。新しく門を管理し、新しいドロップアイテムを入手することが更なる強化に繋がるはずなのだ。
しかしながら、さすがに陸地に門を開くとなると近隣の住民はもちろん、世論が黙っていない。
そんな折に、素晴らしい情報が舞い込んできた。強力な魔力溜り、場所は海上、しかも誰も知らない御剣島沖であれば文句を言う者もいない。むしろ、魔法少女の活躍の場がさらに増え喜ばれるだけだろう。
御剣島の住民? そんなのは知らん。敵対関係にある以上、やつらの面倒を見る必要もない。逆にモンスターからの防衛をこちらが引き受けてやることで恩を売れるだろうとすら思っている。
「事務次官、魔法少女ミルキーが座標から吹き飛ばされた模様、ロストしました……」
「ロスト……? は、はああ? な、なんだと!?」
魔法少女一人で政府軍一大隊規模の力がある。その魔法少女が簡単にやられてしまう訳がない。
「新人の魔法少女のレベルは、確かFランクだったはずだよな?」
「は、はい、魔法少女エリーゼは、Fランクで間違いありません」
「なら、どういうことなのだ! Bランクの魔法少女が三人もいるんだぞっ! ま、まさか、もう門が開いているというわけではないだろうな?」
「わ、わかりません。あっ、アリーナの魔力が消失、代わりにリリスの魔力が倍になりました! これはアリーナの必殺技、エクセレントミラクルパワーをリリスに使用したと思われます!」
「必殺技だと!? ま、魔法少女は一体誰と戦っているんだ!?」
考えられる可能性としては、門からとんでもない強さのモンスターが出現したということ……なのか。
内海で門の管理をしているAランク魔法少女を呼ぶべきか。い、いや、Aランク魔法少女と異界の門は月野の管理下だったな。となると、関西エリアの魔法少女を招集するしかないか。
しかしながら、その間、全国の魔力溜りから出現するモンスター討伐をどこに依頼すればよいのか……。くっ、魔法少女が足りない……。
「じ、事務次官、魔法少女三名及びその他の魔力エネルギー含む全てをロスト、座標から消え去りました……」
「ま、待て、な、何故、消えるのだ……。ええい、すぐに魔導哨戒機を飛ばせ。状況をすぐに確認するのだ!」
「か、かしこまりました」
しかしながら、現地に向かった魔導哨戒機も現場周辺で応答が途絶えることとなる。
その後、関西方面の魔法少女を現地に派遣しようとしていた榊原事務次官の元へ、月野政策参与からの連絡が入った。
「榊原さん、あなたには御剣島への相互不可侵条約違反及び魔法少女派遣法違反の罪が問われております」
「ちょ、ちょっと待ってください月野さん。これは私の独断ではなく、政府、いや、巴村大臣からの指示になります。何かの間違いでしょう」
「残念ですが、私にこの指示をされたのが巴村大臣です。魔法省より特別警察があなたの元に向かっております。お話は後でじっくり聞かせてもらいますね」
「だ、大臣が!? う、嘘だ! そんな訳があるはず……」
狸顔の巴村大臣を思い浮かべながら、あの大臣なら、人を簡単に切り捨てることも厭わないかと思い直した。
それにしても何が起きているのだ。やはり、異界の門で何かが起こったということなのだろうが、私には全く想像ができない。何かしら失敗したことは確かなのだろうが、その全ての責任を私に押しつけるとは想定外だった。巴村を許せないし、何かしら道ずれにする手段を考えようともするが、あの狸のことだ、すでに対策済みだろうな……。それに今から逃げたところで、既に建物の近くには特別警察が控えているか。
「事務次官、ど、どうなされますか」
「……知るかっ。 私は尻尾を切られた人間だ。君は自身の身を守るための動きをしたらいい」
「ど、どちらへ?」
「売店でビールを買ってくる。誰か来たら休憩室にいると伝えろ」




