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10話 炎の欠片

「わ、私がですか? えっと、飲むと火属性の耐性がアップするでしたか」


「君とは異界の門を通じて長いつき合いになると思うんだ。私たちは他の魔法少女をあまり知らない。君さえよければ、ここで暮らしてみないかい? それに少しでも強くなるなら、こちらとしても助かるのだよ。心配なら、最初は私が飲んでもいい」


これは父さんとも話し合いをした結果なのだが、信号機トリオのような魔法少女を派遣されるぐらいなら劣等感を抱えたエリーゼの方がこちらとしても扱いやすいという判断だ。


「エリーゼ、その代わりアイテムの効果については他言無用にしてもらうぞ。これから政府との間で交渉ごとが増えてくる可能性もある。わかっているな?」


「わ、わかってるです。火属性の耐性がつくのはサラマンダーを相手にしなければならない以上、私にとっても有難い話です。で、でも、藍之助はいいのですか? 倒したのは藍之助でしょ」


「俺には必要ない。あの程度の精霊に遅れをとることはないからな。エリーゼはサラマンダー相手だと、二回に一回は必ず死ぬから、せめて耐性をとっておいた方がいい」


「た、確かにそうかもしれないけど、な、なんだかなー! もっと言い方があるかな!」


「エリーゼ、白湯を用意しましたよ」


「あ、ありがとう星那。じゃ、じゃあ、飲むです……」


私の手には紅く輝く炎の欠片。普通に口に入れていいようなモノとは思えないが、ドロップアイテムが人体に悪影響を及ぼすという話は聞いたことがない。そもそも鑑定結果も出ているので問題はないのだろう。


藍之助がこのアイテムを必要としないぐらいに強いのはわかるし、実際に見たサラマンダーを相手に今の私では戦えないのも事実。これは、強くなるチャンスともいえる。


「うー、うぇいっ」


白湯を口に含むと、掌にある炎の欠片を一気に飲み込んだ。口に入ると、そこそこ大きかったサイズだったものが、スルッと喉を抜けて入っていく。


しかしながら、その瞬間お腹が急激に熱くなっていった。まるで、身体の中で細かく割れてしまった欠片が、再び炎となっていくような熱さ。熱いというより、いや、むしろ痛い……。前言撤回、えっーと、これ身体に悪いんじゃないかな……。


「ぐはぁっ、痛っ、痛いっ! お、お腹が、熱いです!」


「だ、大丈夫、エリーゼ?」

「心配いらないよ星那。身体の中で耐性を作っているんだ。明日には復活してるはずだよ」


「なっ!? こ、この痛みが、あ、明日まで続くですか……」


僕の言葉に反応して絶望の表情をみせるエリーゼ。


「悪い、悪い、言うのを忘れていた。火属性の耐性が全くないエリーゼは、少なくとも半日はその痛みに苦しむと思う。次回以降は多少楽になるはずだから、とりあえず頑張れ」


「そ、そんなぁー」


「星那、エリーゼさんを部屋へ連れていってあげなさい。しばらくは動けないだろう」


「はい、かしこまりました。エリーゼ、肩を貸します」


「ううぅ、星那、ありがとう」


「星那、回復魔法はかけるなよ。耐性が作れなくなる可能性があるからな」


「あ、藍之助の、お、鬼ぃー!」

「かしこまりました、お兄さま」


 炎の欠片はあと四回ぐらい飲ませておけばかなり高い耐性を持つことができるはずだ。エリーゼには耐性ができてから門に来てもらおう。そうでないと、何度も死にそうになるはずなので面倒だ。



「それでは、父上、私も門へ行ってまいります。島の結界は念のため強化しておきましょう」


無理やりパワーバインドで封鎖しているものの、強いモンスターがこじ開けようとしたら魔法が解けてしまう可能性も否めない。今日一日は様子見が必要だろう。


「うむ、頼んだぞ。こちらも朔丸を通じて月野女史との話を継続していく。状況が動き次第伝えよう」




全くあの三人は面倒くさいことをしてくれたものだ。いや、三人というよりか政府か。門のこともだが、政府の動きも考えなければならないというのは面倒だけど、そのあたりは父さんが何とかしてくれるだろう。僕はただ島のために力を振るえばいい。


再び、瞬間移動で異界の門の近くに降り立つと門を縛るパワーバインドを解除した。しばらくはサラマンダー狩りをしながら炎の欠片を集めるか。


あと調べることは、この門から出てくるモンスターの種類を確認することと、その強さ、ドロップアイテムの確認といったところか。内海の門からはオークしか出てきていないと聞く。

もちろん、強さやレベルはまちまちではあるらしいが、オーク以外の種は発見されていない。そうなると、この門からもサラマンダーのみという可能性も強い。



そんなことを考えていたからなのか、次に門から出てきたのはサラマンダーではなかった。

それはサラマンダーよりも上位の精霊であるイフリート。


その姿は炎の魔人。両脇から羊のような巻き角が生えており、背丈は僕とそう変わらないサイズ。しかしながら、はだけた素肌は盛り上がるような筋肉で割れている。その姿はあきらかに強者の姿。


「なるほど、これはエリーゼ十人分ぐらいか。エリーゼをどれだけ強化すれば、この門の管理を任せられるようになるのか。どうやら先は長そうだな……」

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