第漆章 7 二回目
7 二回目
気が付けば、彼は虚空にいた。
上下左右、縦横斜め、その区別もないマクロでミクロな、ただ黒いだけの世界。
先ほどの銃撃で受けた傷の痛みも何もなく、脳天から指先までの感覚だけが鮮明で音すらも聞こえてこない。
「……ゆ、り? おい、どこだ、ゆり‼‼」
彼の叫び声がどこまでも広がっていく。
走って、走って、走って。
最果てを目指して駆けていく。
『なあ、彼女すらも守れないのかよ』
声が聞こえた。
明らかなる幻聴に彼は叫ぶ。
「……うる、五月蠅い! 俺はやったじゃないか! あんな世界でどう戦える⁉ 無理だろ、僕も他の人も、どうしたって性格がまるで違うじゃないか‼‼」
心を露わにさせて、彼は響かせる。
『だから、どうしたんだ? おまえ、終わらせるのか?』
怒りに身を任せるのか、あの誓いを壊すのか。選んでも選びきれない。今まで自分が奪ってきたものを自分で取り返そうとして、数千の死をもたらして、結局戻ってきた彼女の死。
『そこまでの根性もないのか?』
そうだとも、と彼は心で思った。
逆に今までできたことが普通で、こなせないのが異常だったのだ。世界に褒められた少年は結局腰抜けなのかもしれない。
『クソだな、じゃあ押しつぶされてでも死んでしまえよ、僕?』
その言葉とともに世界が光に包まれる。
神々しく真っ白に輝いた世界は、鮮やかに塗り替わり、彼はまた眼を見開く。
「……ま、じかよ」
見開いて、行きついた世界は——。
——あの小さな食卓の間で、彼女は箸を持ちご飯を食べていた。
またしても、彼は……。




