第漆章 6 二人
お久しぶりです、ふぁなおです。
ここからも長いですが、どうか秘密を暴くまでは付き合っていただきたいです!
それでは、行きましょう。
6 二人
手をつないだ二人は走っていた。
少なくとも、三十分はずっと……。
「っくろ、くん! 待って……っ!」
引きずられるゆりの脚は震え、限界が近かった。そして、なにより彼女は病院服である。目立った格好に、あの浮遊。通り過ぎる度、十人に一人は「あ! 浮いて——」などと声が掛かる。
「待って‼‼」
信号で、彼女はクロの手を引っ張った。
「っな」
「待って、クロ君! さすがに話して、欲しい……一体、なん、なの?」
「いやまあ、それはなあ……」
腰まで伸びる綺麗な黒髪が風に揺れ、身に纏った病院服は汗で濡れている。靴は血で滲み、顔色は悪かった。不信感を与えるその恰好に、目を逸らす人はいない。
「足……」
「そうだよ、クロ君! 急に走らされるし、すっごく疲れるし、痛い……」
「ごめん……」
「それ、にっ! なんか、クロ君、変……だし」
それもそのはず、当たり前のことだった。
彼は元々、積極的に何かを為そうとする人間ではない。性格も徐々に変わり、話すようにもなってきている。
——だが、彼女はこう言った。
「クロ君って、もっと話す人だったじゃん!」
「……?」
意味が分からなった。別に自分の性格をじっくり考えたことはない、でも、どのくらいな感じのものなのかくらいは分かっているつもりである。なのに、彼女は立て続けにこう言った。
「もっとニコニコしてるし、面白いこと話してくれるじゃん!」
「……」
もはや、理解もできない。
彼はそんな人間ではない、ニコニコ? 面白い? 無縁の言葉の連なりを彼女は発している。
「いや、そんなわけ」
「そんなわけ? なに、クロ君はもっと話す人だよ、おしゃべりだよ? どうしたの⁇」
返す言葉もない、こればかりは何と返すべきかもわからない。
いや、ここで言うしかないのかと思った刹那だった。
——どこからか、強烈な殺意を感じ取る。
大きく、そして何よりも感じたことのない種の殺意。
恐らく、先の騒動で場所が特定されたのだろう。
「や、ば……ごめん、行かないと!」
彼女はもう一度、クロの胸元に包み込まれ、抱きかかえられた。
「え⁉ ちょ!」
「ごめん!」
そう言って、クロは大きく飛び上がった。
少年がいた。
薄暗い一室で椅子に腰かける少年。
見覚えのある黒髪に、まさにと言わんばかりのその顔面。
「はぁあ、やっぱりだね、やっぱり来たね、未来から……ってことは、もしかしたらそう言うことなのかな? これは楽しくなりそう‼‼」
どこかで見たような格好の彼は、どこかで見たように空を飛んだ。
飛び降りて、風に身を任せ、その姿はまるで烏の様。
獲物を見つけた鷹よりかは優しく、それでも鷲の様な信念を持ち、彼は暗闇を滑空した。
「それじゃあ、そっちの僕にも逝ってもらおうかな?」
二人は同調し、一人は破壊し、もう一人は生き残る。
過去の旅は不思議で、タイムパラドックスは現状でも生まれる。
複雑で、問題で、なにより難解。
それでも、死神は進みゆく。
次回お楽しみに!




