第肆章 2敵地(カーネーション)4
それからちょうど10分後。
「よし、もう着くぞ」
「え? 早くないすか?」
「当たり前だ、この機体を何だと思っているゴロ?」
「え、えっと……ハイテクな戦闘機?」
「そうだが、……まったくなあ、まあいいわ。もう着くから準備しとけ」
「へ?」
ゴロは、少し天然だった。
有珠山の上空。
この山は、もし噴火でもしたらこの辺一帯はなくなってしまうほどの威力を持つ火山である。現に2000年の噴火で犠牲者は出さずとも、周辺の工場や道路が破壊されている。そんな怖い山の上空にこのハイテクな戦闘機は止まってた。
すると、彼が口を開いた。
「おい、下」
「ああ、どうしたんだ? ナナ?」
「火山」
「そうだよ、」
「大丈夫なのか?」
「ああ、この戦闘機が火山に与える力はないから気にすんな」
「……ならいいけど、」
「真面目だな、珍しく」
ナナが下を向いた。
そう、その目に映る景色。彼が彼でないときに一度見た光景である。でも、彼は覚えていない。いつか見たかもしれない夢のように感じるだけで、奥底に眠る記憶が今の彼を刺激している。
「よし、準備はいいか」
「ああ、行けますよ」
「はい、お姉さま」
「あいよー」
「……」
「では、カーネーション制圧作戦、開始」
その掛け声とともにB3+αは戦闘機後方から飛び降りた。
高速落下可能なウイングスーツを身に纏い、時速180㎞の速さで高度1000mの上空から山の斜面目がけて急降下。風を切る音が凄まじく、隣を落下中のメンバーのことなど忘れそうになる勢いで一気に落ちていく。だが、そんな感覚も楽し目るはずもなく、そに落下時間わずか20秒。一瞬で地面に着地した。
そして、すぐにウイングスーツを脱ぎ捨てて、自分たちの武器をバックから皆それぞれの定位置、ホルダーへと入れていく。全員が新しい装備を身につけると、すぐにナナが冷静な声で言った。
「俺は単独であそこの小屋から侵入。クハはここで待機。ゴロ、ニヨンは反対側まで移動して、所長の合図で侵入し制圧。移動開始」
こういう時のナナはすごく頼りがいがある。彼の指示とともに皆が行動開始。ナナは一人で木々の間を滑走し、入り口、小屋に向かって走っていく。
一瞬の勢いで扉をぶち破り、小屋の内部へ侵入。
すると、そこに広がっていた光景は『漆黒』と呼ばれる彼でさえも後ずさりしたくなるようなものだった。
超音速ステルス戦闘機にて。
「よし、電磁パルス砲、起動」
闇のボス、彼女自身にも役割があった。
この戦闘機の目玉とでも言いたい、大きな武器を行使することがその役割である。
だが、こんな武器、本来は使ってはいけない。理由は、言わなくても分かるだろう。文字通り、やばい武器なのだ。強烈なガンマ線などの粒子線を放射することでコンピュータ等の電子機器を破壊し、敵の兵器等を無力化する兵器。一見、便利でもあるこれは味方を殺すこともある。まさに最後の一手。言わずとも知れた兵器殺しの兵器。なぜ、ハイテク機を使う、機会にまみれた彼らがこれを使おうとしているのか?
ご名答。
次世代の巣窟。彼らはそれを克服しているのだ。しかも、特定の機械だけに飛ばせるように変化させ、万が一仲間やその人が持つ機械に当たっても粒子ごと透明化させることでその実害を回避する。嘘すぎる事実。計り知れない、むしろ理論とは言えないほどにねじ曲がった現実がそこにはあった。
『発射可能です』
「よし、発射」
瞬間、この戦闘機が発光した。
たったの一瞬、人間には分からない一瞬の時間にその化け物たる兵器の線は発射され――。
「な、に?」
ナナは珍しく、一歩後ろに足を動かしていた。
ビビッとくるこの雰囲気に、匂いに、第六感を刺激する変な何かを感じ取れたのだ。別に、足元に転がっているカーネーション構成員の屍に驚いていたわけではなかった。そんな小屋の中を見渡すと、リーダー「ハート」の凄惨な表情をした頭を見つける。
「何があった?」
すぐには理解できなかった。自分たちが殺そうとしていた標的が人知れずに死んでいた。まさか自殺した? いいや、そんなことはあり得ない。そういったことをしようとする者の目ではないことを彼は知っている。あの部屋で見た写真から伝わって分かるくらいの執念があった男なのだ。いくら何でも目標を、目的を、何が何でも為そうとする男は、そのような惨めで愚かな行為はしない。
では。
なぜ?
彼の足元に広がる光景は一体、誰がやったことなのか。
否。
その疑問の答えは彼の目の下にあった。
そう、目の下。見据えるその階段の先に。
一歩下がった自分の足を前に出す。明かり一つない階段を彼はゆっくりと下りて行った。
長い二節が終わりです!
いやあ、次世代の技術って気になりますねー!
僕も都市伝説とかで、あるよとか聞きますが、あるのかなって思ったりします。裏組織、絶対にあるよ、多分。
いやどっち!?




