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魔王転生!  作者: 貴花
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プロローグ

 突然だが、俺は自殺している最中だ。

 いやまぁ、どうして? と思う人もいるだろう。というか俺も事情を知らなければ同じ反応をしていると思う。


 ちなみに今いる場所は自宅の部屋であったりする。あ、自宅って言っても借家ね? 流石に自分の家を持ってるほど金持ちじゃないから。


 ちなみにこの借家、ぶっちゃけちゃうとヤクザが管理している家の一つだったりするんだなこれが。どうして自宅がそんな借家なのかと言うと色々長くなるんだが……。


 簡単に言うと済ませるとそこにしか俺の場所がなかったからだ。13歳、中学に上がる前に俺は親に多額の借金を背負わされ家を追われた。


 そんでもって借金取りが闇金、つまりヤクザが経営してる会社から借りたもんらしく俺は親の代わりにそいつらに捕まった。


 それからというもの、それはもうこき使われた。詐欺の手伝いに鉄砲玉、挙げ句の果てには変態野郎に俺を売りつけて腕を折られたり爪を剥がされたりした。


 こんなのはまだ序の口だ。ただ、これだけ聞くとまるでどっかの主人公みたいだろう?


 これがどっかの小説や漫画のような物語だったら素敵な人が借金を肩代わりしてくれたり、美人が養ってくれたりとかどっかで救いがあっただろう。


 けど救いがあるのは一握りの人間だけ、現実はそんなに優しくもない。そもそも物語っていうのは自己満足で作られたものだ。


 誰もが小説や映画、漫画に心を打たれるのはそれが現実では味わえない出来事を感じる事が出来るからだ。


 猫を飼えない子供が猫の動画を見るように、自分では決して叶う事の……いいや、体験する事が出来ないからこそ物語は成立する。


 もしも一人の人間の一生を本にしたところで読む者はまずいないだろう。それが平凡な当たり前の日常のものなら尚更だ。


 だってつまらないから。人間はいつだって自分の持ってないもの、見えないものにこそ価値を見出すものだと俺は思っている。


 古いものは淘汰され、新しきものが時代を作っていく。形あるものがいつか崩れ去るように、常に物語は想像を超えたフィクションによって作られていくのだ。

 

 っと、話が逸れてしまった。まぁつまり何が言いたいかって言うとだな、現実はいつだってそんなフィクションを許してくれないし、非情だって事だよ。


 その証拠にほら、俺は今自殺をしなければいけない状況に追い詰められている。普段使ってる机には俺が書いた自殺を仄めかす遺言書がある。


 内容は人生に疲れたとか、僕は勝手に死ぬんで気にしないでくださいとか、誰に対して書いたのか分からない文章だ。


 これは言い訳、メディアに対して不審に思われないようにこれはただの自殺だよーと思わせるためのデコイだ。


 孤独死、俺には相応しい死因だろう。親はもう生きているかどうかも分からない、姉貴は……きっとどっかで元気でやってるだろ。


 これから俺はここで首吊り自殺をしてその死体をヤクザ達に引き渡す契約になってる。内臓とか眼球を売ればちょうど借金を返せるらしい。


 そうすれば、姉貴には手は出さないとそうアイツらは約束した。アイツらは人間最底辺のクズ供だが、金が手に入れば次の金ヅルを探しに切り替える習性がある。


 もう今度の相手には目をつけてるらしくどっかの不動産を脅すとかなんとかって話をこっそり聞いた事があった。


 俺が事務所にいても俺を物として見ているアイツらにとっちゃこの話を聞かれても何とも思わないと思ってるらしい。


 まったく清々しいほどにクズ野郎供だよ。


 俺はいい金ヅルAとして処理されて記憶から消えるだろう。もう姉貴には手を出す事もないだろうし、俺一人の死で誰も困らず皆ハッピーだ。


 ハッピーエンドってやつだ、決してバッドエンドなんかじゃない。


「……誰に言い訳してんだかな俺は」


 フッと自虐的に笑う。我が生涯に一片の悔いなし、なんて言えるほど俺は出来た人間じゃあない。悪意にまみれて育ってきたマセガキだ。


 人の顔色を伺って、ありとあらゆる知識を総動員させて誰かを騙して、隙だらけのやつには盗みだって働いた。


 そう、俺もクソ野郎の一人だ。それでもこうやって人間らしい感情があるのはきっと、本を読み続けてきたからだろう。


 何が正しくて、何が悪いのか、一般教養も知識も何もかも俺は本から得てきた。人間から得たものなんて人間はクソっていう定義だけだ。


 もちろん世の中には善人だっている。理由もなく人を救ったりするようなヒーロみたいなやつだっているだろう。


 けれど、どいつもこいつも信用ならねぇ。友情だの愛情だのそれこそ俺にとって物語の中の言葉だ。


「さて、そんじゃあ……」


 置かれている椅子に俺は足をかける。背が高くなったような錯覚を覚えながらぶら下がっているロープを掴む。


 最後にこの部屋を見渡す。あるのはベッドに机、そして読み散らかってる本の山だ。深呼吸をして、心に一区切りつける。


 そしてゆっくりと、ロープを首にかける。心臓が苦しいほどバクバク鳴ってる。身体中から汗が止まらない。呼吸が変になる。


 足が、震える。


「くそっ、くそっ、くそっ!! 死にたくねぇのに……! あぁもう、クソが!」


 駄々をこねたガキみたいに、クソなんて言葉を連呼して、声を張り上げる。無理矢理自分を鼓舞して、馬鹿みたいにひとしきり叫んだ後、椅子を横に蹴った。


 ガタンと音に足が痛みを訴えかける。そしてすぐに、首に想像を絶する痛みが襲ってきた。


「〜〜〜〜〜〜!!!!!」


 痛い、痛い痛い痛い痛い!!!

 首吊り自殺ってこんなに痛いのか!?

 ロープが食い込む、呼吸が出来ない、嫌だ死にたくない、でも死ななくちゃ、嫌だ嫌だ嫌だ。


 まだ死ねないのか、早く死にたい死にたくない。苦しい苦しい苦しい、まだ。まだまだだまだだだだだ。


 もう視界は真っ黒、ただ足をバタつかせる。声なんて出してる暇はない。なんで、死ねなななななな。


——————あ




 俺の意識は、命の灯火と一緒にそっと掻き消えた。

赤髪の騎士と黒髪の忌み子を執筆してる最中に書きたくて突発的に作った小説です。

少しでも楽しんでくれたら幸いです。

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