表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/234

ゲジゲジ

「いやぁあああ!! こっち来ないでぇええ!!」


 柄にも無く全力で叫ぶシャルロッテの目の前には超巨大なゲジゲジが・・・。


 全身の血の気が引いてシャルロッテは卒倒しそうになる。もはや得意の魔法を使える精神状態でも無く、今にも膝から崩れ落ちそうだ。


「”サンダーボルト”」


 横から彼女の前に躍り出たマルクがゲジゲジに向けて魔法を放つ。


 放たれた偽りの雷が巨大なゲジゲジの肉を焼き、独特の異臭を放って身をよじらせた。その気持ち悪い様をみてシャルロッテが再び絶叫する。


 トドメをささなくてはならないが流石のマルクもあの巨大な虫に近寄るのはためらわれるのか一瞬近寄るのを躊躇する。


 次の瞬間、最後のあがきとばかりに巨大なゲジゲジがその身をくねらせながら二人に目がけて勢いよく突進してきた。


「「いぎゃぁああ!?!!」」


 その異様に二人は同時に悲鳴を上げる。ぞわぞわと全身の毛が逆立ち、生理的嫌悪感で筋肉が縮み上がる。


「ったく、しょうがねえガキ共だ」


 その言葉と供に背後から聞こえる乾いた破裂音。


 一筋の光の線が巨大ゲジゲジを貫き、その内側で何かが破裂した。


 炸裂弾。


 先の北の遺跡で生み出したその弾は対巨獣戦において絶大な威力を発揮する。どちらかといえば対人専門であった速見の戦闘力を飛躍的に高めた技だと言えるだろう。


「おいおいテメエらデカい虫が出来てきたくらいでパニクってちゃこの先辛いぞ?」


 呆れたようにそう言った速見に、二人は少し照れたように頭を掻いた。


「いや、わかってはいるんだけど身体が拒絶したっていうか・・・」


「私はこの死体の側にすら寄りたくないわ・・・」


 そんな二人の側にトテトテと太郎が近寄ると励ますように「ワフッ」と一声鳴くのであった。


「そろそろ日も暮れてきた・・・今日はここいらで野営の場所を探すかね」









 パチパチと薪が燃える楽しげな音が響き渡る。


 崖際に出来た天然の洞窟。かつては野生動物の巣として使われていたであろうその場所を野営地の場所と決めた。


 この場所を探しながら速見が仕留めた名も知らぬ野性の鳥を捌いて木の枝尖らせた串に突き刺したき火で炙る。


 肉の焼ける良いにおいを嗅ぎながら腹を空かせる三人の横で太郎は分け与えられた生の肉をガツガツと頬張っていた。


「しかし今のところは大した魔物は出てきていないな。立ち入り禁止の場所だって話だったから序盤から死闘になると覚悟していたんだが」


 速見の言葉に頷くマルク。


「そうだね。体感的にはCからBランクの魔物しか出てきてない感じだ」


 魔神の身体が封印された秘宝 ”死のアミュレット” が眠る場所だ。それが簡単に攻略できる筈が無いと頭では理解できていても、こうして低ランクの魔物ばかりがでてきては気が抜けてしまうというもの。


「でも気を抜いたら駄目だからね二人とも」


 たしなめるようにそう言うシャルロッテ。


 夜はゆっくりと更けていく。







 ソレは見ていた。


 数十年ぶりに自分のテリトリーに足を踏み入れた愚か者共。


 人間が三匹、狼が一匹。


 許さない


 許さない。


 テリトリーを侵すモノはなんで在ろうと生かしては返さない。


 ソレはその心を激しい憎悪で燃やしながらも冷静に獲物を観察する。その目的、戦力、弱点・・・すべてを見ているのだ。


 そして夜が訪れた。


 闇に全てが覆われる夜の時間は夜目の利くソレの独壇場だ。


 崖際の洞窟で野営の準備をする一同をねっとりと見つめながらソレは決意をする。


 今夜、こいつらを狩るのだと。


 ソレは長い舌をべろりと出して自らのかぎ爪を舐めるのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ