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耐性

「・・・覚えた、ですカ・・・それはそれは素晴らしい話デスね。アナタの身体はどのような攻撃でも一度受ければ耐性がつくようデスが・・・見たところ完全に無効化出来てる訳ではありませんね?」


「何が言いたい?」


 男の言葉にジェミニはおどけたようなジェスチャーをして答える。


「おオ! アナタの耐性と私の攻撃、どちらが強いか試すと致しましょウ!」


 次の瞬間、ジェミニの右手に炎の塊が左手からは冷気の渦が生み出される。


 左手を振るうと極寒の冷気が男を襲い、その身を凍り付かせた。しかしジェミニにもこの攻撃が効いていない事くらい分かっている。


 故にこの攻撃はただの足止め。例えダメージが無くても全身を覆う氷の牢獄から脱するには少しの隙が生まれる。そこを突くのだ。


 右手をギュッと握り締める。


 纏った炎の塊が小さく圧縮されてその威力が極限まで高められた。


「ヒャァアア!!」


 奇声を発して右手の炎を男に投げつけるジェミニ。放たれた炎は緩やかな放物線を描いて氷り漬けの男に着弾し、先ほどよりも巨大な火柱が巻き起こる。


「まだまだ行きますヨォ!!」


 ジェミニはそう叫ぶと再びその両手に炎を灯す。煌々と燃えさかる火柱に向かって次々に追加の炎の塊を投擲した。


 炎の柱は絶え間なく注がれる追加の燃料を得てより強く燃え、辺り一面は炎から発される光で眩しいほどに照らされている。


 遠く離れた術者からも感じ取れるほどの灼熱の温度。その中心にいる男のダメージはいかほどのものだろうか。


 その時、ジェミニは場の空気が変わったような感覚を覚えた。


 まるで自身が処刑台の上に立たされているかのような死が喉元まで迫ってきているぞわぞわとした感覚。


 かつて自分が魔王として君臨していた時、自分を殺しに来た当時の勇者に喉を掻ききられたあの感覚と同等の・・・。


「煌めけ ”暁の剣”」


 いつの間に背後に立たれていたのだろうか。


 振り返ると全身を焦げつかせ、目を怪しく光らせた男が聖剣を振り上げている姿が目に映った。


「・・・おオ。これは参っタ」


 振り下ろされる聖剣。


 その鋭き刃はジェミニの肉体を軽々と両断した。








 パチパチと先ほどの戦闘で燃え残った炎が寂しげな音を立てている。


 誰もいなくなった戦場跡、血まみれで転がっている道化の死体をしげしげと眺めながら死体と同じ姿をした男は呟いた。


「コレは私の手には負えそうに無いデスね・・・」


 魔王ジェミニ・・・死んだはずの道化はしみじみとそう言うとズボンのポケットから何かを取り出した。


 それは心臓のように見える。


 ように見えると表現したのは、それが何者かによって損傷しており、原型をほとんど止めていなかったからだ。


「アラぁ、コレはもう使えないデスね。せっかく今回の奴は強かったのに・・・まだストックはありまスが余裕を持ってもう少し集めないト」


 そして立ち上がったジェミニはヒョコヒョコと飛び跳ねながらその場を後にしたのだった。


  

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