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決着

(まずはその視界を奪う!)


 マルクが展開したのは下位魔法サンダー。攻撃性能の低い魔法だが、一点に力を集中させたサンダーボルトと違ってその力は周囲に拡散する。


 即ち敵の視界を遮る簡易的なブラインドになるのだ。


 マルクはサンダーを放った後、場所を悟られぬようその場から離れる。アンネの位置を中心にしてぐるりと半円を描くように周囲を駆け、走りながら身体強化の魔法を発動する。


「”ジャイアントフォース”」


 純粋な身体強化の魔法。


 アンネの背面に回り込んだマルクは強化された脚力で一気に距離を詰めるとグラディウスで斬り込んだ。


 唸りを上げて振るわれるグラディウスの一撃を、アンネは視認する事も無く音のみでその攻撃を確認するとするりと体勢を入れ替えて刃を回避。返しの一撃でマルクの左肩を切りつけた。


 吹き出す鮮血、しかし目で確認せず振るわれた一撃故にその傷は浅く、戦闘に支障は無いだろう。


 マルクはバックステップで距離を取るとグラディウスを正眼に構え、アンネを鋭く睨み付けた。


「・・・先の攻防で剣では勝ち目が無いと知りながらあえて接近戦を挑むのか・・・・・・なるほどな」


 何かを納得したように頷いたアンネはマルクに哀れむような視線を送る。


「悲しいな少年。やはりお前は私の言葉を真剣に受け止めるべきだったと思うぞ?」


「・・・何が言いたいんです?」


 アンネはやれやれと首を横に振って言葉を続ける。


「確かに君は強くなった。しかし純粋な剣士で無い君には接近戦で私に勝つことなどできないし、純粋な魔法使いで無い君にはシャルロッテのように強い魔法を連発する魔力も持っていない・・・つまるところ半端なんだよ君は」


 哀れむようにそう言ったアンネに、しかしマルクはニヤリと笑うと口を開いた。


「そう思いますか?」


「・・・どういう意味だ?」


 眉をひそめるアンネ。


「そう思ったのなら・・・アナタの負けだ!」


 そう叫んで駆け出すマルク。


 走りながら自身に身体強化の魔法を付与する。


「”ジャイアントフォース” ”サンダーアーマー”」


 発動した二つの魔法の効果によってマルクの身体能力が劇的に上昇する。先ほどとは比較にならないスピードで突っ込んでいくマルク。そのスピードをグラディウスに乗せ、アンネに重い一撃を叩き込む。


「笑止、速さが上がったとてそんな単調な剣で私に勝てると思ったか!」


 確かにスピードは上がった。しかしその攻撃は単純そのものだ。


 アンネはかすかな怒りすら覚えながら先ほどと同じようにグラディウスの刃を受け流そうとし・・・刃と刃が交差したその瞬間、剣に流れ込む電流がアンネの手をしびれさせた。


 ”サンダーアーマー”


 それは魔王パイシスによって開発された一般には知られていない魔法。


 使用者の身に薄い魔力の防護を纏う ”アーマー” の魔法と電撃を放つ ”サンダー”の魔法を融合させた複合魔法である。


 身体に雷の膜を纏い、触れた相手を感電させる。威力は弱く、そもそも近寄られたら負けの純正魔法使いにとっては使い勝手の悪い魔法だ。


 しかしそれは近接戦闘の出来ない魔法使いに限った話。


 マルクのように近接戦闘を得意とする術者が使ったのならそれは極めて強力な魔法へと早変わりする。


 マルクの放つ攻撃全てに雷の能力が付与され、少しでもマルクに触れるとそこから通電するのだ。


 その威力は一瞬敵をひるませる事しか出来ない。


 しかし、剣士の戦いにおいてその一瞬が命取りなのだ。


 マルクは剣を取り落としたアンネの首元にグラディウスの刃を突きつける。ギラリと光る肉厚の刃を首の皮膚で感じ、アンネは悔しそうに両手を上にあげて降参の意を示した。


「俺の勝ちです!」




 

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