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実践投入

 迫り来る無数の魔物たち。その異形に兵士達はぶるりと身体を震わせるが上官の怒鳴り声に近い命令を聞いて気を持ち直す。


「構えぇい!」


 ビリビリと大気を振るわすような大声を張り上げるのはグランツ帝国正規軍の最高責任者レイ・ヴァハフント将軍その人だ。


 62才の高齢ながら今だその戦闘能力と指揮能力は衰える事を知らず、強大なグランツ帝国の軍事力の要であり続けている。


 将軍の指揮に従って兵達は一斉に用意していた新兵器を構えた。


 その名は ”スマッシャー”。


 かつて速見の落としたライフル銃を拾った宮廷錬金術師カルロス・アルキミア。彼によって錬金術の力で量産された殺人兵器。


 その数実に五千丁。レイ将軍のかけ声と供に一斉に構えられた5千の銃口はピタリと迫り来る魔物の軍勢に向けられている。


「放てぃ!!」


 合図と供に5千のスマッシャー、その全てが火を噴いた。耳をつんざく破裂音と立ち上る硝煙の香り。その標的にされた魔物の軍勢はほぼ壊滅状態にあった。


「二撃目構えぇぃ!」


 再び向けられる銃口に、その武器の正体はわからずとも危険なモノだとは把握できたのだろう。魔物達は本能のままに逃走を始める。


 しかし、そんな無様な逃走を歴戦の将軍が許す筈も無いのだが。


「放てぇい!」


 再び放たれる無数の銃弾。


 スマッシャーは開発されて間もない為、兵一人一人の射撃の練度は低いのだが何せ5千という数はそれだけでも脅威となる。


 下手な鉄砲数打ちゃ当たるを地で行くような戦法を前に、魔物の軍勢はその背中を打ち抜かれて呆気なく崩壊した。


「・・・なるほど、凄まじい兵器だ。まさかこんなに早く決着がつくとは・・・まるで5千の魔法使いで蹂躙しているような圧倒的力だ」


 レイ将軍は今回の成果を見て興奮したように呟いた。


 魔法使いというのはその力が強力な反面数が圧倒的に少ない。その技術の複雑さ故に一流の魔法使いはなかなか育ちにくいのだ。


 それ故に魔法を極めたモノには相応の地位が約束され、わざわざ魔法使いが軍に在籍するという事例も少ない。


 高い地位が約束されているのにわざわざ命をかけるような職につく酔狂な奴は少ないのだ。そしてその数少ない酔狂な魔法使いはたいてい冒険者になってしまうのだが・・・。


 長年軍を指揮してきたレイ将軍は思っていた。強力な力を持つ魔法使いを軍に組み込めたのならそれは国力を強めるもっとも効果的な手では無いのかと。


 しかしその一方で、魔法使いという貴重な人材を戦争で使い潰す事を良しとしない国の上層部の意見も理解できる。故にこの思いは不可能な夢物語として諦めていたのだ。


 レイ将軍は再び熱いまなざしで部下の持つスマッシャーを見た。


 この兵器は魔法使いほど万能では無いがその遠距離火力に限って言えば魔法使いのソレを超えるかもしれない。なにせ量産化可能という事が素敵だった。


 つまりはコレがこのまま量産され続ければ自軍のすべての兵が魔法使い並の遠距離火力を有する最強の軍団が出来上がるのだ。


 その最強の軍団を思い浮かべ、将軍はぶるりと身体を大きく振るわせた。


「・・・これなら世界征服も夢ではないですぞ陛下」


 そう呟いた顔に浮かんでいたのは、血を望む獰猛な獣の笑みであった。






 


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