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共闘

 世界の深淵を覗くための研究、その人間の好奇心の極みとも言える知識の産物である魔法と神にその身の全てを捧げて信仰する事で為し得る神聖術。人間の清い信仰心を糧とする奇跡は真逆とも言えるベクトルの力だ。


 目の前のストーンドラゴンがこの異なる二つの力を使ったという事実にタケルは一瞬頭が真っ白になる。


 深い知識を持つタケルだからこそ生まれたその一瞬の隙だが、それを見逃すほどストーンドラゴンは優しくは無かった。


 その巨大な尻尾を振りかぶり、タケルに向かって一線。


 まともに攻撃を受けたタケルは身体をくの字に折り曲げて地面と水平に飛んでいき、そのまま壁に衝突して意識を失った。


 まだ動いている獲物は一人。


 ストーンドラゴンはこの遺跡を守護するという仕事を全うすべく、黒焦げたアンネの治療を行っているカテリーナに向かって歩を進めた。


「くっ・・・ここで終わる訳には・・・」


 カテリーナは迫り来るストーンドラゴンの巨体に恐怖の視線を向けながらもアンネの治療を続けた。


 ドラゴンは再び口を開くとサンダーボルトの魔法を展開。アンネの治療を続けるカテリーナに向かって偽りの雷が襲いかかる。


「っく・・・”プロテクション”」


 アンネに治癒の奇跡を行使しながら二人の周囲にプロテクションの防壁を展開。放たれたサンダーボルトの魔法は透明な防壁に阻まれてたち消えた。


 治癒の奇跡とプロテクションの奇跡の同時展開。


 カテリーナが聖女と称される程優秀な聖職者であるからこそできる荒技であり、その消耗は計り知れない。


 額に冷や汗を浮かべ、顔色は血の気が引いて青白くなってくるがそれでもカテリーナは二つの奇跡を行使し続けた。


 カテリーナの状況があまりよくない。


 このまま放置していれば死に至る危険があるのだ。


(・・・ああ、でもそろそろプロテクションの方が・・・)


 サンダーボルトを防がれたのが気にくわなかったのか、ストーンドラゴンは怒濤の勢いで駆け寄ってきてその巨大な前腕で猛烈な物理攻撃を仕掛けてきた。


 一撃、二撃。


 プロテクションの防壁が石の巨腕に打たれる度にカテリーナの体力がゴリゴリと削られていくのがわかる。


(もう・・・限界・・・)


 ストーンドラゴンの強撃を前に、ついにプロテクションの防壁が破られる。表情の無い石作りのドラゴンの顔が、ニヤリと意地悪く笑ったような錯覚を覚えた。


 ドラゴンの巨大な前腕が振り上げられるのを見てカテリーナはギュッと眼を閉じて身を固くする。


(ああ・・・神よ・・・)


 やってくるであろう衝撃に恐怖し、神への祈りの文言が頭に浮かぶがしかしそれは部屋の入り口方向から聞こえた聞き覚えのある声によって遮られた。


「”メガ・ファイアボール”」


 側面からぶつかってきた巨大な火の球に、ストーンドラゴンは不意をつかれてそのまま横転する。


 カテリーナが入り口の方向を見ると、そこに立っていたのは木製の杖を高らかに掲げたシャルロッテの姿だった。


「シャルロッテさん! 無事だったのですね!」


 落とし穴の罠にはまったシャルロッテをずっと心配していたカテリーナは目に涙を浮かべて安堵するが、彼女の隣に見知らぬ二人が立っている事に気がつく。


 フード付きの暗色のコートをつけた中年の男と、漆黒の全身鎧を身に付けた巨体の騎士風の男だ。


 騎士風の男がその巨体からは想像できない軽やかな動きで倒れたストーンドラゴンの前まで駆け寄り、右手に持った禍々しい装飾の施されたランスを構える。


「我が名は暗黒騎士フェアラート! 遺跡の守護者よ、いざ尋常に勝負!」 



 

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