希望の光
強い国を作る。
そのためには、既存の腐れ切ったシステムを壊さねばならない。
ウィリアムはそう考えた。
力のない、血統ばかりの貴族や王族による統制。
民はやせ細り、国は力を失っていく……。
このフスティシアは多少マシとはいえ、それでも腐りきった貴族階級というものは存在する。
血統ばかりの無能だけで国が回るはずが無い。
力が必要だ。
既存のシステムを破壊する力が。
それは何も武力だけに限った話ではない。
知力、求心力、体力、勤勉。
現状、平民に生まれたというだけであらゆる才能を持つ人材が踏みにじられている。
破壊せねばならない。
力を持つ者として、
世界最強を自負するものとして……。
「閣下!失礼いたします」
ノックの音と、元気の良い声。ウィリアムはニヤリと不敵に微笑むと「入れ」と入室許可を出した。
入ってきたのは、姿勢の良い年若い男。
彼の名はイーサン。
平民の出ではあるが、剣の腕も頭脳も申し分ない逸材。
現体制への反逆の一歩としてウィリアムが右腕として取り立てた人材。
「志願兵の選別が終わりました。書類の確認をお願いいたします」
イーサンが持ってきた羊皮紙を受け取る。
分厚い羊皮紙の束。この一枚一枚がウィリアムを信じて志願してくれた希望の光。若き力だ。
「さて、書類仕事は面倒だが……頑張るとするかね」
コキリと首を鳴らし、世界最強の男は難しい顔で書類と向き合うのだった。
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