魔王サジタリウス 3
「・・・どういう事だ?」
訳が分からない。
そして、青色に輝くあの左目・・・・・・。どうやら右目の千里眼とは別物のようだが、魔王サジタリウスが千里眼以外の魔眼を持ちあわせているなんて話は聞いたことが無かった。
「私が右目は ”世界を識る”力・・・そしてこの青く光る左目は ”確定した事実とあり得たかもしれない可能性を識る”力だよ」
「・・・それが答えのつもりか? 言っちゃ何だが、アンタ話が下手だとか言われないか?」
速見の皮肉に、サジタリウスは微笑みで返す。
「意地悪だなぁ君は、まあ焦らずに聞き給えよ。仮にも魔王様のありがたいお言葉だよ? ・・・それが仮初めの魔王だったとしてもね」
「仮初め?」
「ほら、興味が出てきただろう? だから、少し私の話を聞いておくれ」
そして魔王サジタリウスは語り出した。彼女の両目の力、その真実を。
「若干のニュアンスの違いはあるけれど、わかりやすく言うと私の左目は過去と未来の世界を識る事ができるのさ」
「過去と・・・未来だと」
あまりに突飛な能力に言葉もでない。
「そう、右目で現在の世界、左目で過去と未来を識る・・・・・・つまり私は生まれながらにしてこの世界の真理に最も近い存在だった」
だとしたらとんでもない事だ。その能力は最早神の領域に違いなかった。
「力には責任が伴う・・・私は識ってしまった。 ”魔神”という存在を・・・そして世界の終わりをね」
彼女曰く、魔王サジタリウスの座に座るべきだった魔族は他にいたのだという。
しかしこの世界の終焉を識った彼女は行動を起こした。
台頭する前の魔王サジタリウスを殺し、自らが偽りの魔王となることで、歴史の修正を計ったのだという。
「でも駄目だったよ。私が何をしようが歴史は変わらなかった・・・全てを理解していても、所詮私もこの世界の歯車の一部、何をしようと物語の大筋が変わることは無かったのさ」
だから別の視点を持つことにした。とサジタリウスは続けた。
「この世界に取ってイレギュラーである存在・・・つまり別の次元からの転移者ならば歴史を変えることができるのではないかと仮説を立てたのさ」
難しい話が多かったが、彼女がやろうとしている事は理解出来る。しかし、速見にはどうしてもわからないことがあった。
「じゃあ何故俺を待っていた? 少なく見積もっても、俺はこの時代から1000年も後にしかやってこない人間だ・・・・・・転移者というのなら、この時代にも他にいるんじゃないのか?」
今はクレア・マグノリアにより魔改造されているが、速見自身、別に戦闘能力が高いわけでもない一般人だ。
歴史を変えるなんて大役に、選ばれるはずもない。
「いや、君じゃ無いと駄目なんだ・・・・・・君の能力とか性格とか、そんなものは関係ない、今から何万年の時をさかのぼっても、ありとあらゆる未来の可能性を探っても、私のこの ”千里眼” に適合できる人物は君以外いないのだから」




