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魔王サジタリウス 2

「やれやれ、やっと君と会話をすることができたよ。取りあえずは休戦という事でいいかな?」




 魔王サジタリウスは、やけになれなれしく話しかけてきたかと思うと、勝手に休戦宣言をして、弓の構えを解いた。




 しかし、何故会話ができているのだろうか? 速見の知る限りでは千里眼は効果範囲内の全てを視認することができるが、音声は認識できない筈だ。




 そんな速見の疑問を見抜いたのか、サジタリウスは説明を始める。




「次の段階に進んだという事だよ。この能力は便宜上 ”千里眼” と呼ばれているが、その本質は視界の拡張なんかじゃない。この能力は ”世界を識る”力だ」




 世界を識る・・・力。




「だからさ、おしゃべりをしようよ。この距離でおしゃべりが出来るなんて、世界広しといえども君と私だけなんだからさ」




 見たところ、完全に敵意は無さそうだった。




 気を許したわけでは無い。しかし、同じ能力を持つ先達に、少し話を聞いてみたいとも感じている事は確かだった。




 しかし、最初に問わねばならない質問は決まっている。




「ノアは・・・無事か?」




 攫われたノアの安否を確認する速見に、魔王サジタリウスは一瞬ポカンと口をあけた。まるでそんな事を言われるとは思わなかったといわんばかりに、一瞬間を開けてから口を開く。




「あぁ・・・そうだったね。彼女の事を失念していた。大丈夫さ、彼女に危害は加えていない、そも私は彼女にさほど興味はない。アレは君をおびき寄せるためのただの餌だからね」




 餌、サジタリウスは事もなにげにそう言い放った。




「・・・ということは、天下の魔王様がこんなしょっぱい魔族のなりそこないに興味があったと?」




 皮肉げにそう返した速見に、サジタリウスは大まじめに頷く。




「あぁ、もちろんさ。私は君を呼び寄せるためだけに彼女を拉致した。君に、伝えなくて鳴らない事があるからね」




 わからない。




 魔王サジタリウスはなぜここまで速見に執着するのだろうか?




 そも、速見がこの時代にやってきたのは最近の出来事で、この時代で何か人の目にとまる事をしたわけでも無い。つまり魔王が速見に目を付ける理由がわからないのだ。




「不思議そうな顔をしているね。何故私が、いつから私が君に目をつけたのかわからない・・・そんな顔をしている」




 そして魔王サジタリウスは、今までヒタと閉じられていた左目をゆっくりと開いた。




「簡単な事さ、私はずぅっと君の事を見ていた。この時代に君が来る前・・・いや、この世界に君が来る前からずぅーっとね」




 開かれた魔王の左目は、何か妖しげな深い青色に輝いていた。










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