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逸脱者

 業火に包まれたウィリアムをチラリと見て、勝負は付いたとばかりに剣を鞘に収めるトパーズ。


 周辺の炎は一切衰えを見せず、それどころか時が立つほど大きく燃え上がるようだった。 トパーズの戦闘能力は高い。


 否、高すぎる。


 その戦闘力は一回の魔族にしては異常で、歴代の ”魔王” と呼ばれる存在と比較しても劣るモノでは無かった。


 トパーズ自身、幼少の頃より自分は魔族の王となるべくして生まれてきたのだと確信していたし、それだけの実力は確かにあったのだ。


 そう、魔王サジタリウスさえ同じ時代に生まれ落ちなければ・・・・・・。


(・・・さて、最大の脅威は去ったとはいえ、森の民の方も掃除をしておくか。このトパーズがいる限り、何者の刃も魔王サジタリウスの元に届くことは許されない)


 かつて魔王サジタリウスに敗れた時、トパーズの胸にあったのは屈辱などではなかった。


 ”自分はこの御方に仕えるために生まれてきた” と、心からそう感じ、自分の使命に出会えた歓喜に打ち震えたのだ。


 今のトパーズはただ忠義の為に戦う、魔王サジタリウスの右腕、最強の剣。そして最堅の盾。魔王サジタリウスの軍が少人数でも機能しているのは、彼の存在がとても大きい。


 トパーズが魔王城へ戻ろうと戦場に背を向けた次の瞬間、ゾワリと背筋に悪寒が走る。一瞬遅れてトパーズの首が、背後から鮮やかに斬り飛ばされた。


「気を緩めるにはまだ早ぇよ?」


 ドサリと地面に倒れるトパーズの体。それを見下ろすは先程炎で焼かれた筈のウィリアムだった。


「隠し球持ってんのはテメェだけじゃあねんだ・・・ほら、サッサと復活しろよ? 続きをしようぜ・・・どっちかがくたばるまでな」


 そう言って不敵に口角をつり上げるウィリアム。


 肌は所々が焦げついており、革製の服は燃えて消しクズになっているが、どうやら致命傷は無さそうだ。


 地面に転がったトパーズの体が激しく燃え上がり、先程の再現とばかりに復活を果たす。 しかしその表情には先程のような余裕の色は無く、忌々しげにウィリアムを睨み付けていた。


「・・・まさか二回も殺されるとは思わなかった・・・・・・あの炎に焼かれて生きているとは、お前は本当に人間か?」 


「あぁ、正真正銘、混じりっけ無しの人間さ。ただ、どんな存在にも例外というモノが存在する・・・・・・お前だってそうだろ?」


 ウィリアムの問いにトパーズは頷いた。


「・・・そうだな。ではお互い逸脱者同士、存分に殺し合うとしようか」


 魔族と人間。


 互いに種族は違えど、その常識を逸した強さという異常性でシンパシーを感じていた二人。


 最強達は、互いの力量を認め合い、そして互いにその全力を解放した。




「燃え上がれ! ”沈まぬ太陽の剣”(サント・ルス)」



「打ち滅ぼせ! ”傲慢の大剣”(スペルビア)」























「・・・お前の勝ちだ人間。名を聞かせてくれるか?」


「ウィリアム・J・ビルドゥ。人類最強の男だ」


「・・・・・・そうか・・・そうだな。では最強の男よこのトパーズを討ち取った褒美だ。この剣を持っていけ」


「・・・・・・あぁ、わかった。貰ってく」


 死にかけのトパーズの手から、ウィリアムは太陽の聖剣を受け取った。それを見届けたトパーズは満足げに微笑む。


「行け、ウィリアム・J・ビルドゥ。その最強の刃が、果たしてあの魔王サジタリウス様に届くのか、地獄から楽しみに見ているとしよう」








◇ 

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