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炎の魔族4

「・・・逃してしまったか。まあいい、森の民一人程度ならどうとでもなる」


 走り去ったミルを見て、トパーズは肩をすくめた。そして右手に握り締めた剣の切っ先をウィリアムに突きつけた。


「ハッキリ言ってお前の戦闘力は異常だよ人間。その刃、下手したら我が主人に届くやもしれん」


「届くかも・・・じゃねえ、届くんだよ。そのために来たんだ」


「そうはさせない・・・そのためにこのトパーズがいるのだから」


 ジリジリと間合いを詰める両者。


 次の瞬間、ウィリアムが神速の踏み込みと供に、両手で握り締めた大剣をブンと上段から振り下ろした。


 大剣の重量と、ウィリアムの尋常ならざる膂力が合わさった必殺の一撃。十分な威力が乗ったその斬撃を、相対するトパーズは剣の腹で半円を描くようにして受け流す。


 太陽の聖剣の出力が強大だとはいえ、ウィリアムほどの実力者の一撃をまともに受けることは不可能。どんなに変則的に見えても、剣と剣の闘いの基礎は変わらない。


 リーチと威力に優れる大剣に対して利となるは、一撃を躱した後の反撃の速さ。懐に潜り込んでしまえば、小回りのきかない大剣に有利は無くなる。


 攻撃後、隙だらけなウィリアムの首を目がけて、聖剣の一撃を叩き込む。通常ならコレで勝負はついていただろう。しかし、ウィリアムは超人的な反射速度でその一撃を回避すると、振り下ろした大剣を力尽くで方向転換し、横向きに薙ぎ払った。


 唸りを上げて振るわれた肉厚の刃が、呆気にとられているトパーズに胴を一刀両断する。綺麗に上下真っ二つに切り裂かれた体は、ボトリと湿った音を立てて地面に落ちる。


 地面に転がる切り裂かれた死体を見下ろして、ウィリアムは小さく息を吐き出しながら剣を宙で振るい、付着した血液を落とした。


 呆気ない結末だ・・・しかし闘いとはそういうもの。実力が拮抗していても、一瞬の油断で決着はついてしまう。


「・・・・・・先を急ぐか、ミルが心配だ」


 そう呟いて、その場から離れようとしたその時、地面に転がっていたトパーズの死体が勢いよく燃え上がった。


 目を見ひらいて驚愕するウィリアムの目の前で、ゆっくりと立ち上がるは死体だった筈のトパーズ。


「・・・断言しておこう人間よ。お前がいかに強かろうが、このトパーズに勝つことは決して出来ないと」



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