炎の魔族2
「その気迫・・・・・・なるほど、イプシロンを殺したのはお前だな?」
トパーズに問いに、ウィリアムは相手を挑発するように笑みを浮かべた。
「どうだったかな? 生憎いちいち潰した蟻の数なんて覚えちゃいねえしな」
「ふんっ、挑発なら効かんぞ? 俺は俺の仕事を全うするだけ・・・つまり・・・」
パチンと指を大きく鳴らすトパーズ。
次の瞬間、彼らを中心とした半径10メートル程の円形の火柱が地面から吹き出す。
「どちらが相手などつまらぬ事を言うな。どちらにせよ二人とも逃しはせん」
ギラギラと戦意を漲らせるトパーズに、ウィリアムはあくまでも冷静に大剣を構え、大きく前に踏み込んだ。
尋常ならざる速度で距離を詰めてくるウィリアム。魔王サジタリウスの腹心であるイプシロンすら一撃で屠った刃の一撃をトパーズに放つ。
鉄と鉄のぶつかる甲高い金属音が響き渡った。
キリキリとつばぜり合いをするトパーズとウィリアム。トパーズの手には、どこから取りだしたのか、見慣れない一振りの剣が握られていた。
剣を払い、一旦距離を取るウィリアム。
絶対的な力を誇っているウィリアムに取って、自分の全力が受け止められたというのは初めての経験であった。
対するトパーズはしてやったりとばかりにニヤリと笑って手にした剣を一振りする。
スッと真っ直ぐに通った刀身に灼熱の炎が纏われる。少し離れた位置にいるウィリアムにすらその温度が感じられるほどの高温。
「誇るが良い人間。イプシロンを屠ったお前には最初から全力で相手をしてやる・・・・・・この宝剣の名は ”沈まぬ太陽の剣”(サント・ルス)。俺の切り札だ」
剣から発せられる圧倒的なパワー。最強を自負するウィリアムが思わず生唾を飲み込んだ。
「・・・・・・へぇ、大したモンだなその剣。本人より強いんじゃないか?」
挑発するようにそう言ったウィリアムに、トパーズは何事もないかのように頷いた。
「その通り。この剣には俺の魔力の核が埋め込まれている・・・故に」
ブンと素振りを一振り。
”沈まぬ太陽の剣”の刀身が燃え上がり、周囲の温度が数度上がったように感じられた。
「この剣を抜いた俺の力は、これまでの比ではないぞ?」




