表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

210/234

遠距離戦 2

 千里眼を展開する速見。


 半径10キロメートル。それが速見が千里眼で近く出来る限界の距離。それ以上広げようとすると、脳で情報が処理出来ず、射撃どころでは無くなってしまう。


(しかし360度全てを見通す必要は無い・・・ここから魔王城に向けた前方だけに範囲を限定すればもう少しいけるか?)


 そんな事を考えていると、速見の認知範囲内に一本の矢が出現した。


 恐ろしく速いスピードで、魔王城に向けて駆けている二人を目がけて飛んでいく。


 矢の角度と速度から、速見は瞬時に脳内でタイミングを計算し、引き絞った矢を放つ。放たれた鉄の矢は、弓に込められた精霊の祝福もあって、風の影響を全く受けずに真っ直ぐに飛んでいった。


 速見の放った鉄の矢は、魔王城から飛んできた矢をジャストのタイミングで捉えて地面にたたき落とすことに成功する。


 飛んでくる矢を矢で打ち落とすなど、しかも数キロ先の的を撃ち抜くなんて尋常の技ではない。千里眼を持っているからといって、その芸当ができるかどうかは別問題だ。


 極限まで研ぎ澄まされた速見の集中力と、長年の戦闘で積み重ねられた射撃の技術、そして千里眼の空間把握能力。それらが重なって生まれた奇跡の技。


 しかし喜んではいられない。第二射はすぐにやってきた。


(第二射・・・・・・いや? 第三射も来ているな・・・)


 間を置かずの連続射撃。しかも2本の矢は同じ軌道上にあるのでは無く、それぞれ全く別の軌道を描きながら魔王城に向かう二人を狙っている。


 着弾まで2秒というところか・・・。


 ゆっくりと狙いを付けている暇は無い。速見は息を止め、カッと眼を見ひらいて素早く二本の矢を連続で放った。


 放たれた鉄の矢は、寸分違わず二人を狙う矢をそれぞれ打ち落とす。


 普段の速見ならこんな芸当は不可能だっただろう。


 しかし、千里眼同士の遠距離戦というこの特殊な状況、緊張感が速見の射撃能力を急速に成長させていた。


 脳は処理する情報量の多さに悲鳴を上げている。ツゥーっと右目から一筋の血が流れ出た。休んではいられない。すでに魔王サジタリウスの次の攻撃は始まっていた。


(次は三連・・・いや、4・・・・・・5連射・・・か)


 この勝負、受けに回っている速見の圧倒的に不利だった。しかしこの場所から魔王城までの距離は遠く、速見の千里眼では魔王サジタリウスを捉える事ができない。受けに回る事しかできないのだ。


「・・・・・・っしゃらくせぇ!!」


 驚くべき早業で飛来する5射を次々と打ち落とす速見。


 全ての矢を打ち落とせた事を確認したその瞬間、ドンッという衝撃と供に前方に吹き飛ばされる速見。


 何が起こったのか理解できない。


 顔面から地面に突っ伏して、遅れて背中に激痛が走る。


 顔をしかめながら背後に顔を向けると、自分の背中に一本の矢が突きささっているのが見えた。


「・・・・・・は?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ