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遠距離戦


「しかし、ウィリアム殿の実力は凄まじいの一言に尽きますね。その背中の一振りは名の知れた魔法武器なのですか?」


 魔族との対戦で見せつけられたウィリアムの実力に、ミルは興奮気味に問いを投げかける。ウィリアムはまんざらでも無さそうに背中の大剣を引き抜いて説明を始めた。


「目の付け所がいいなミル。そうさ、これはちょっとした一品でな。俺が最強を求めて武者修行をしていたときに永久凍土の北の大陸から・・・・・・」


 ウィリアムの自慢話が始まろうとしたその時、速見の右目が突然ズキリと痛み出す。


(っ痛!? いったい何が・・・・・・)


 次の瞬間、本人の意志とは関係なく右目の千里眼が発動した。この感覚は、つい先日森の民の集落で魔族が襲ってくるのを察知した時と同じ。つまり、この場に危機が迫っているということだろうか? 


 速見は素速く判断を下すと、千里眼で周囲の状況を把握する。


(半径1キロ地点・・・異常なし。2キロ・・・3キロ・・・!?)


 半径3キロ地点、魔王城の方向から飛来してくる物体を検知。


(速い・・・否、速すぎる!? このままでは・・・)


 楽しげな声で自身の武勇伝を語っているウィリアムとミルを振り返る。二人が飛来物に気がついている様子は無い。


「回避しろ二人とも!! 何か来る!」


 二人ともその実力は伊達では無く、速見の声にいち早く反応すると、その場から横っ飛びに回避をする。速見も素早く身を翻して安全地帯まで後退すると、一瞬遅れて目の前に何かが飛来してきた。


 速見の目の前に着地したソレは、勢いのまま周囲の地面を吹き飛ばし、モウモウとした土煙が視界を遮った。


 しかし土煙など関係ない。速見の右目にはハッキリとそれが視認できていた。


 ソレは一本の矢。


 何の変哲も無い矢に矢に見えた。しかしあれほどの速度で飛来してきた矢が、そしてこんなにも周囲を破壊するほどの威力を発揮しながら原型を保っている時点で普通の矢で無いことは明らかだ。


 そして、この矢が飛んできた方向には魔王城が・・・つまりこれは魔王サジタリウスによる攻撃。ならば、この一射で終わりの筈がない。


 速見は何かを覚悟した顔で背負っていた弓を構えた。


「・・・この射撃はスピードが速すぎる。千里眼を持っている俺にしか対処することは難しいだろう・・・・・・二人とも、先に行ってくれるか? 飛んでくる矢は俺が全部たたき落としてやるからよ」


 あの絶対的な強さを見せたウィリアムすら反応できていなかった。やはりこの異常な攻撃に対応できるのは、千里眼を持つ速見のみ。


 速見は覚悟を決めて矢筒から鉄の矢を取り出す。


「行け! 速く! 向こうはどうだか知らねえが、俺の持っている矢はそう多くねえ・・・矢が尽きる前に城までたどり着け!」


 速見の言葉に二人は無言でコクリと頷くと、魔王城目がけて駆けだした。速見は大きく息を吐き出して、魔弓 ”アウストラリス” に鉄の矢を番えた。


「・・・さて、遠距離勝負といこうか魔王サジタリウス」


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