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アウストラリス


「申し訳ございません。我ら森の民は表だって魔王サジタリウスと対立することはできないとのことです・・・・・・。ですが、長が武器を貸して下さるそうです」


 里長の家から戻った後、割り当てられた部屋で傷の手当てをしていた速見の元に、ミルがやってきた。


 ”森の民は魔王と表だった対立はできない”


 当たり前の事だ。


 魔王という絶対強者に対して、一民族が対立するなど愚の骨頂。下手に目立つ事をすると敵視されて一族もろとも滅ぼされかねない。


「・・・・・・そうか。いや、武器を貸してくれるというならありがたい。助かるよ」


 というならば、この先は一人で魔王と対峙しなくてはならない。思い返してみれば、魔王という存在と、正面から戦うのは初めての事だった。


(しかし、いつまでたってもダメージが抜けない・・・・・・あの時の魔神の攻撃で生き残れたのは、奇跡に等しいな)


 全開の速見であれば、一人で魔王と対峙する事も可能だったかもしれない・・・しかし、今の速見では相当な策を練らねば厳しいだろう。


 しかも相手は千里眼を持つという魔王サジタリウス。奇襲の類いは通じないと考えて間違いないだろう。


「武器の保管場所まで案内します。ハヤミ殿、ついてきて下さい」






 ミルに案内された場所は、集落から少し離れた場所にある石造りの小屋だった。集落の中にある家は、だいたいが木製のものであったので、一つだけポツンと存在する石造りの小屋は少し異様な雰囲気を醸し出していた。


 そんな速見の様子を察したのか、ミルが小屋について説明を始める。


「森の民は基本的に石を扱った建造物は作りません。この小屋は、集落と古い付き合いのある ”石の民” からの贈り物です」


「 ”石の民”? 聞かない名だな」


「そうでしょうね。彼らは地下に穴を掘って居住区としています。人嫌いで、滅多なことでは人前に姿を現しませんから・・・・・・。彼らは火と土の精霊と交信することができ、我ら森の民とは兄弟のような関係にあります」


 そう説明しながら、ミルは小屋の扉に石のカギを差し込んだ。ゆっくりと扉を押し開ける。ギギギと軋んだ音を立てながら、石の扉がゆっくりと開かれた。


 小屋の中は幾つかの石箱が綺麗に整頓されていたが、しばらく誰も入っていなかったのか、薄らと埃が降り積もっていた。


「ここは武器庫のようなもの、通常の武器では無い特別な一品をここに保管しているのです。」


 そう言いながら、ミルは迷いの無い動きで一つの石箱を開ける。重い石の蓋が取り外され、中から姿を現したのは、無骨な鉄製の弓だった。


「石の民が鍛造した鉄製の弓に、我ら森の民が精霊の加護を付与した一品です・・・・・・そしてこれは、かつて魔王になる以前のサジタリウスが使用していた弓でもあります」


「魔王が使っていた・・・弓?」


 渡された鉄製の弓はずっしりと重く、弦を引くことすら只人には困難そうだった。


「銘は ”アウストラリス” きっとこの武器なら魔王の心臓に届くでしょう」




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