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一手




「お手を煩わせてしまい申し訳ございません、我が主人よ」


 深々と頭を下げるは上級魔族のトパーズ。その端正な顔を苦々しげに歪めながら主人の言葉を待つ。


「・・・良い、お前の失態を許そうトパーズ。・・・・・・それに、目的のモノは手に入ったしな」


 男性にも女性にも思える中性的な声音。トパーズの主人である魔王サジタリウスは、魔王城の玉座にユッタリと腰掛けていた。


 その部屋は薄暗く、魔王の姿はハッキリとは視認できない。わずかな光源から、そのシルエットが薄らと浮かび上がって見えるのみだった。


 意外というか、サジタリウスのシルエットは小柄だった。只人の戦士と比べても細身で、戦闘を生業としている風には見えない。


「ありがたき幸せ。して、我が主人よ。何故この小娘が必要なのですか? 見たところ、特別な力は持っていないようですが・・・・・・」


 そう言いながら、トパーズはチラリと隣に視線を向ける。そこには、ブルブルと震えている少女の姿が。


 魔王サジタリウスは、少女に興味が無さそうな視線を向ける。


「もちろん、この少女に力なんて無い・・・ただの変哲の無い異世界人だ」


「異世界人・・・・・・ですか?」


 困惑したようにそう繰り返すトパーズを無視して、魔王サジタリウスは少女に向かって何かを語りかける。


 その言葉は、トパーズには聞き慣れない不思議な発音で、まるでこの世界の言葉では無いようにすら聞こえたのだった。


 しかし、魔王サジタリウスの言葉を聞いた少女には、その内容が理解できたようで、急に血相を変えて後ずさりを始めた。


「・・・・・・今の言葉は?」


 トパーズに問いに、魔王は不敵に微笑んだ。


「ふふっ・・・なんでも無いよ。お前が気にすることはない」


 答えをはぐらかす魔王に、自分が知るべきでは無いことだと判断したトパーズは、無言で深々と頭を下げる。


 その様子を見ていた魔王サジタリウスは、上品に笑い声を上げた。


「ハハッ・・・そう、それで良いんだよトパーズ。お前はお前の仕事をすれば良い」


 そして魔王は、その右目をカッと見ひらく。


 深紅に染まった右の千里眼が爛々と妖しい光を放っていた。


「さて、この一手に対して、里のジジイはどう出るかな?」




 

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