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里長 3

 里長はゆっくりと話し出す。最強の射手と呼ばれた異端児の昔話を。


 かつて森の民の集落で生まれた魔王サジタリウスは、漆黒の肌をしていた。珍しい事ではあったが、それでも数千年に一人の割合で漆黒の肌を持つ森の民が生まれる事はあった。この現象は ”先祖返り” と呼ばれる現象で、森の民の先祖がかつて漆黒の肌を持っていたという伝承に由来している。


 そして、漆黒の肌を持つ森の民は高い確率で精霊の強い加護を受けているのだ。


 魔王サジタリウスもそうだった。生まれながらにして強力な精霊の加護を受けていたサジタリウスは、通常なら習得するために数百年の歳月を要する精霊術の秘奥を、たったの10年ですべて会得してしまった。


 その才は異端と称されるに相応しい程の凄まじさであったが、魔王サジタリウスの本領は精霊術では無かった。


 右目に宿った千里眼の能力による正確な射撃。その射撃能力は他の追随を許さず、有給の時を生きる森の民の歴史上でも類を見ないほどの射手だったという。


「・・・・・・なるほど、この集落に生まれた漆黒の肌を持つ異端児、それが魔王サジタリウスなんだな?」


 速見の言葉に、里長は無言で頷いた。


「じゃあ聞かせてくれ、なんでサジタリウスは魔王となった?」


 其の問いに、里長は何故か首を横に振るのだった。


「それがわからんのじゃよ・・・・・・魔王サジタリウスが幼子の時、ワシが世話をしておった・・・アレは千里眼の保持者だったからの、その使い方を伝授しておったのさ。優しい子じゃった・・・・・・聡い子じゃった。そこにいるミルと同じように、サジタリウスも精霊の秘奥を追い求めて旅に出た・・・・・・そして、そのまま戻ってこなかったのじゃ」


 故に魔王となった理由はわからない。里長は「すまんの、役に立つ情報がなくて」とつぶやき、そっと目を閉じた。


(・・・・・・結局、魔王サジタリウスについてわかった事といえば、奴が元森の民だったって事くらいか。・・・・・・しかし、千里眼を持つ魔王相手に、今の俺が対抗できるのか?)


 速見はそっと唇をかみしめたのだった。





 

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