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里長 2

「急な訪問で申し訳ございません」


 深々と頭を下げるミルに、里長はニコリと優しく笑った。


「・・・よいよミル坊。お前が赤ん坊の頃から面倒を見てるんだ、今更遠慮するような仲でも無いじゃろう?」


 ガサガザとした聞き取りづらい声。皮膚は堅く乾いており、生物と言うより長くを生きた樹木を思わせた。よく見ると、その両眼は白く濁っており、どうやら視力が無いようだった。


「ありがとうございます長老。ご紹介が遅れましたが、隣にいる彼は・・・」


 速見の説明を始めるミルを、里長が制した。


「よい・・・”見て”いたからの」


 不可解な言葉。”見ていた” とはどういう事だろうか?


 速見がそんな疑問をいだいた時、里長が白濁した目をカッと見ひらいた。何事かと身構える速見だったが、やがて里長の変化に気がつく。


 焦点の合っていなかった白濁した目が徐々に紅く染まり、ぼんやりと発光しだしたのだ。


 そう、それはまるで・・・・・・。


「・・・千里眼、という能力じゃ」


 紅く発光した目をギョロリと動かしながら、里長は聞き取りづらい声で話し出す。


「世界を見通す事の出来る魔眼、森の民の中でも限られたモノにのみ開眼する精霊からのギフト・・・・・・。そして、」


 フルフルと震える手で、里長は速見の・・・その右目を指し示した。


「アナタの右目と、魔王サジタリウスが持っているソレと同種のものじゃ」


 速見は何も言えず、ただ無言で頷く。里長はその様子を見ながら、ゆっくりと会話を再開した。


「何故、アナタがこの能力を有しているのかはわからないが・・・魔王サジタリウスについては幾分か知っておる。・・・・・・アナタが知りたいのは、サジタリウスの情報なのじゃろう?」


「・・・ああ、よろしく頼む」


 里長は「承った」と呟くと、静かに瞼を閉じた。再び開かれたその瞳には、紅い光は灯っておらず、焦点の合わない白濁した眼球だけが虚ろに動いている。


「・・・・・・あれはいつの事だったか、魔王サジタリウスは ”魔族” では無く、”森の民”としてこの集落で生まれたのじゃ」




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