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戦力差

 ”魔王サジタリウス”


 千里眼を持つ、弓の名手として名を馳せた魔王。速見の右目には彼の死体からクレア・マグノリアがえぐり取った千里眼が埋め込まれている。


(詳しくは知らないが、魔王サジタリウスは恐らく数千年前に君臨していた魔王の筈・・・・・・。

どういうことだ? 魔王パイシス曰く、魔神の復活に伴って供となる魔王が復活する可能性があるという事だが・・・・・・魔王サジタリウスが蘇ったという事か?)


 わからない。


 だが、速見が見知らぬ森の中で彷徨っている間に、何かとんでもない事がおこっている事は間違いが無かった。


(・・・考えるのは後だ。今はこの窮地を生き延びる事が先)


 思考を切り替える速見。


 負ったダメージの性で全力が出せないこの状況。相手は一流の魔族、他の事を考えている余裕なんて無い。


 ピリピリと緊張した空気の中、最初に動いたのはミルだった。


「”ドリアードよ、森の子に力を貸したまえ”」


 力ある祈りの言葉と供に、懐から取りだした麻袋に手を入れ中から取りだした植物の種を地面にばらまくミル。ボウッと薄緑色に地面が発光し、次の瞬間、ミルの祈りに答えるかのように地面にまかれた種からニョロリと芽が飛びだした。


 ソレは驚くべきスピードで成長しながら空中で一つにまとまり、一本の槍となって余裕の表情を見せているトパーズに襲いかかる。


「森の民のみに伝承される精霊の秘術・・・・・・素晴らしい。だが、だがな。精霊術とはそも戦闘に使うための術では無いのだろう? そんな柔な攻撃でこの俺を止められると思わぬことだ」


 植物の槍がまさにトパーズの胸を貫かんとしたその瞬間、彼は右手をそっと掲げ、指を一つならした。


 超高温の火炎に飲まれて消し炭となる植物の槍。涼しげな表情でニヤリと笑うトパーズと、能力の相性の悪さに苦々しげな顔をするミル。


 戦力差は圧倒的だった。しかし、諦めるわけにはいかないのだ。


 自分だけの問題だったのなら、諦めるという選択肢もあったのだろう。しかし背後で震えているノアや、出会ったばかりの二人の為に戦ってくれているミルに申し訳がたたない。


(ダメージを負っているとか言っている場合じゃねえ・・・・・・この闘いで体が壊れちまっても良い・・・だから・・・・・・)


 速見は全神経を右目に集中させ、大きく深呼吸をして心を落ち着けた。


 ゆっくりと息を吸い込み、肺に空気を染みこませる。




 一つ、



 二つ・・・・・・。



 カッと目を見ひらく。


 発動した千里眼が、矢を射るべき箇所とタイミングを知らせてくれる。


 人間には不可能な神速の動きで矢を番えた速見は、驚くべき正確さで矢を放った。



 

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