表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

192/234

飛来

 部屋の扉を乱暴に開き、勢いよく飛びだす速見。ダメージが抜けきっていない体がミシミシと悲鳴をあげるが、それを無視して全力で駆けだした。


 視界に広がるは、ずっとベッドに寝ていた速見に取っては初めて見る ”森の民”の集落の姿。


 鮮やかな緑色の毛髪をした、見目麗しい森の民達が、全力で疾走する速見の姿を興味深そうに見ていた。


 本来なら傷の治療をしてくれた礼を言うべきなのだろうが、今はそんな暇は無かった。


 先程千里眼で確認した道を全力で駆ける。やがて集落の外れにある、少し開けた原っぱにたどり着いた。


 そこには、元気いっぱいに遊んでいるノアと、それを優しげな顔で見守るミルの姿。


 速見は喉が枯れんばかりに大声で忠告をする。


「二人とも!! そこから離れろ!!」


 速見の言葉に、ノアはキョトンと振り返る。言葉が通じない事もあってか、その場から動く様子は無い。


 しかし隣りにいたミルは流石のもので、速見のただならぬ様子を感じると、素早くノアを抱えてその場から離れる。


 次の瞬間、空から飛来した何かが、先程まで二人がいた原っぱに衝突した。


 大地を揺るがすような衝撃と、何かが焦げつくような鼻を刺す刺激臭。速見は臨戦態勢を維持しながら、ノアを庇っているミルと合流した。


「・・・・・・あれは何ですかなハヤミ殿?」


 ミルの疑問に、ハヤミは静かに首を横に振った。


「わからない・・・が、このままじゃやべえって事だけはわかる」


 苦しそうにそう言いながら、速見の右目からは絶え間なく血が流れ出ていた。


「その右目・・・」


 心配するミルを、速見は静かに手で制する。


「心配は後だ・・・ミル、武器は持っているか?」


「護身用の弓と、矢筒を一つ持ってきています。本数は十五・・・これはハヤミ殿に渡しておきましょう」


 手渡された弓を受け取りながら、速見は疑問を投げかけた。


「ありがたいが・・・アンタは武器無しで大丈夫なのか?」


「我ら森の民は、精霊の秘奥を扱う術をもっています。お気になさらず」


 そんな会話をしているうちに、モウモウと舞い上がっていた土煙が収まり、ソレが姿を表した。

 シルエットは人型・・・しかしその大きさは常人より二回りほど大きいようだった。土色の肌と、風になびく白髪。爛々と光る赤色の両目が、ヒタと速見を見据えた。


「・・・なんと面妖な。お前は魔族か? それとも人か?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ