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見知らぬ地 3

 草木のしげみに身を潜め、葉のついた木の枝をいくつか体にかぶせてカムフラージュをする。石を砕いて鏃にしようかと考えていたのだが、想像以上にダメージを受けていたらしく、石を砕く力が残っていなかった。


(・・・小川が近くにあって幸いだった・・・獲物はかならず水を飲みにやってくるだろうからな)


 適切な待機場所は確保した。後は獲物がやってくるまでジッと待つだけだ。


 速見は狙撃手である。待つことは彼の得意分野だといえた。


 しかし消耗がはげしい。先ほど見つけた名も知らぬ橙色の実。食べられるかどうかも分からないが、取りあえずとポケットに詰め込んできた。


 その一つをつまみ、そっと口に運ぶ。


 野性味の強い草の香りと、ほんのわずかな甘み・・・通常の人間よりも鋭敏な味覚でじっくりと味わい、どうやら毒性のものでは無さそうだと判断した速見。大した栄養にはならないだろうが、空腹を紛らわせるためにゆっくりと実を噛みしめる。


 超人的な忍耐力でジッと待機する速見。時折実を口に運ぶ以外は音も立てずにジッと小川を見つめる。


 ただ、

 ひたすらに

 その時を待つ・・・。









 どれだけの時がたったのだろう? 日が沈みかけ、木々が赤色に染まる頃、その時は訪れた。


 狐のように見える小動物が、音も立てずにソロリソロリと小川までやってきた。静かに水を飲み始めたその小動物を視認した速見は、音を立てずに準備を始める。


 木の枝を削って作った最低限の矢を、お手製の弓につがえる。キリキリとゆっくり弦を引き、照準を合わせる。


 簡易的な矢だ。連射に耐えるような造りでも無く、この一矢を外してしまえば狩りは失敗だろう。

 酷く消耗はしていて、さらに弓は使い慣れた武器でも無い・・・。


 だが焦りは無かった。


 速見は狙撃手だ。ならばこそ、どのような武器であれ、狙撃なら基本は同じ事。


 ゆっくりと呼吸を静める。殺気を押さえ心を殺す。ただ照準を合わせるだけのマシンと化した速見は、静かに呼吸を数えた。





一つ



二つ・・・・・・




カッと目を見ひらく。次の瞬間に放たれた矢は、速見の思い描いた通りの放物線を描いて小動物を一撃で射抜いた。


「・・・・・・よし」


 小さく声を出す速見。


 取りあえずの食料は確保した。食事の時間だ。




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