見知らぬ地 2
何はともあれ、体力を回復させないことには始まらない。速見は長くの時を、冒険者として過ごしてきた。何も道具をもっていない状況でのサバイバルなんて、何度も経験してきている。
(武器が必要だな・・・簡易的なものでいい。何か獲物を狩って、肉を食おう)
冒険者の時の癖で、もしもの時の備えとして、一振りの短刀は常に懐に忍ばせている速見。もちろん、冒険者のたしなみとして、石を砕いて打製石器のようなものを作る技術は習得しているが、都合良く黒曜石が落ちているような状況もまれだし、何より刃物から作成するのは非常に手間だ。常に小さな刃物を持ち歩いているほうがよほど賢い。
懐から取りだした短刀。久しぶりに鞘から引き抜いたその刃は、長らく使っていなかったとは思えないほど澄み渡っていた。
(近距離の武器は性に合わねえからな・・・用意するなら弓・・・に、なるか)
弓が得意なわけでは無い・・・だが、近距離の武器に比べれば多少はマシだった。
重い足を引きずりながら、よくしなり、細い木を選別する。見つけたのは柔らかくて木材としては使い物にならない木。だが弓をつくるのには最適だった。
育ちきっていない若木を選んで短刀で伐採する。伐採した木をちょうど良い長さに揃え、地面に立てかけて短刀で半分に割る。手先が器用な方では無い速見だが、それでも長年の経験からか、手際よく弓を作成していく。
(意外と覚えているもんだな。外で弓を作るなんて随分と久しぶりだが・・・)
木の皮を剥ぎ繊維を取り出す。これをより合わせると弓の弦として使えるのだ。
しばらくして質素な弓が完成した。満足な出来というほどでも無いが、取りあえずの使用には耐えうる造りにはなっているだろう。
体力が大きく消耗している。速見が通常の人間であったのなら、すでに命は無かったかもしれない。
周囲を軽く見回してみるが、食べられそうな植物も無い。となると、やはり得物を狩るしかないだろう。
そう判断した速見は、お手製の弓を手に、得物を求めて歩き出すのだった。
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