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見知らぬ地

 サラサラと、水の流れる音が聞こえる。


 最初は遙か遠くから、かすかに聞こえる程度だったその音は、だんだんと大きくなっていくようだった。


 次に感じたのは香り。


 濃い、草木の香り。それは天気の良い日に草原に寝転んだ時のような爽やかなものではなく、ジメジメとした夏の日の夕立に打たれながら嗅ぐような、ムッとするような草木の香りだ・・・。


 ゆっくりと、速見は重い瞼を開ける。視界に飛び込んできたのは、サラサラと流れる透き通った小川。


 ソレを見た瞬間、自分が強烈に喉が渇いている事に気がついた速見は、鈍痛のする体を引きずるようにして小川まで這って進む。体力を消耗しすぎていて、まともに立ち上がれないようだった。


 小川までたどり着いた速見。サラサラと流れるその水を、直に口をつけてゴクゴクと飲む。


 ただの水が、こんなにも旨く感じたのは生まれて初めてだったかもしれない。極限まで乾いた体に、甘く、優しく染みこんでいった。


 気が済むまで水を堪能した速見は、いくらか活力が沸いてきたのだろう。顔を上げて周囲を見回した。


 360度、見回す限り生い茂る木々。見慣れない景色。自分が何故こんな所にいるのか、ぼんやりとモヤがかかったような頭で思考する。


(・・・確か、俺は魔神と戦っていて・・・・・・)


 蘇る記憶。


 全てを消滅させる魔神の攻撃と、それに飲み込まれる紫髪の麗人・・・孤高のネクロマンサー、クレア・マグノリアの姿。


「・・・・・・・・・」


 どうやら自分は生き延びたらしい。では彼女は・・・クレア・マグノリアは生き延びたのだろうか?


 右目の千里眼を発動させようとするが、どうやら速見は自分が思っていた以上に消耗しているようで、魔王サジタリウスの千里眼は、ピクリとも反応しなかった。


(まずは自分が回復しないと話しにならない・・・か)


 そこで初めて、速見はあることに気がつく。


「・・・・・・ ”無銘” はどこだ?」


 長く速見と連れ添ってきた相棒の武器、”無銘”が失われていた。


 消耗しきった速見は独り、身を守る武器も無く、途方にくれるのであった。






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