魔神の一撃
クレアの硬い拳が魔神の顔面を捉える。
尋常ならざる膂力によって振るわれたその拳は、まともにヒットすれば大抵の敵ならば一撃で屠る事の出来る威力を持っている。
派手な衝突音。しかしクレアは、右の拳から伝わってくる感覚に違和感を覚えた。思い切り叩き込んだ筈の右拳・・・しかし魔神はピクリとも動かず、何かを叩いたという手応えが全く伝わってこなかった。
ギョロリ。
魔神の複眼がクレアを捉えた。
「なかなかのパワー・・・・・・これは魔王カプリコーンのものか?」
そして攻撃後、隙だらけになったクレアの首を、魔神の左手がガッシリと掴んだ。そしてそのまま彼女の体を片手で持ち上げる。
苦悶の表情を浮かべるクレア。何度も異形の右手で魔神を殴打するが、ダメージを負った様子はまるで見られなかった。
「おいおいおい! いきなりピンチじゃねえか!?」
後方で待機していた速見が、焦ったように狙いをつけて、魔神の頭を狙撃する。恐るべき正確さで放たれた光弾は、しかし何故か魔神に当たる直前でかき消えた。
「良い腕だ狙撃手くん。しかし、その攻撃は先ほど学習したからね・・・もう同じ攻撃は喰らわないよ」
柔らかな声音でそう言い放つ魔神ギャラクシー。速見に撃ち抜かれた右腕はすでに完治しており、傷一つ無い右腕を大きく頭上に掲げた。
「愉快な君たちに敬意を表し・・・この私、魔神ギャラクシーの秘奥を見せてあげよう」
掲げられた右手に七色の光が収束していく。光景自体は先ほどの攻撃と同じもの・・・しかし放たれるオーラが、この技だけは撃たせてはいけないと見るモノに悟らせた。
最初に反応したのは最強の騎士アルフレート。太陽の聖剣を振りかざし、一気に魔神との距離を詰める。
そして遠距離攻撃の効果が無い事を悟った速見は、無銘を近距離用の軍刀に変形させ、自らの主人を助けださんと駆けだした。
しかし全ては、遅すぎたのだが。
「”次元破壊光”」
振り下ろされる魔神の右手。収束した光が一気に解放される。目がくらむほどの発光。ソレは周囲にいた全ての人間の視界を奪うが、魔王サジタリウスの千里眼を持つ速見だけにはハッキリと見えていた。
そう、魔神に掴まれていたクレアが、真っ先に光に飲まれて消えてゆく姿を・・・・・・。
「・・・・・・クレアっ!?」
そして全ては光に飲み込まれ・・・・・・やがて、何もわからなくなった。
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