援護
炸裂弾を放ち、骨のドームを破壊して中に侵入した速見。
すでに臨戦態勢の彼の視界に飛び込んできたのは、聖剣を手に漆黒の翼が生えた魔族と死闘を繰り広げる騎士アルフレートと・・・その後方でピクリとも動かずに地に転がっている魔王パイシス。
そして、血みどろで息を乱しているクレア・マグノリアの姿。
「無事か!? ご主人!」
駆け寄ってきた速見の姿をチラリと見て、満身創痍のクレアはニヤリと口角をつり上げた。
「・・・ああ、下僕・・・か。全く・・・良いところに来てくれる」
「おいおい、随分と良い格好じゃねえか。いつもの自信満々なアンタはどうしたんだ?」
軽口を叩きながら、速見はチラリと敵を見る。漆黒の翼が生えた人型の魔族。見たことも無い相手だが、この三人が押されているのだ、相手がどういう存在なのかくらいは予想ができる。
「・・・・・・あれが魔神か?」
速見の問いに、クレアは静かに頷いた。
「ご明察の通り。あそこにいるのが史上最悪の天災。魔神と呼ばれる、全ての生命を脅かす存在だ」
「ここで元勇者を食い止めれば、魔神は復活しない筈じゃあ無かったのか?」
そうでなければ、そもそもこの作戦を立てた意味が無い。速見の言葉に、クレアは少し遠い目をして答える。
「その筈だったんだけどね・・・・・・まあ、全てが計算通りって訳にはいかないわよ」
話しながら少し回復してきたのか、クレアはスッと深く息を吸い込んで戦闘態勢に入った。バキバキと彼女の骨が音を立てて変形し、鋭い獣の爪がギラリと姿を覗かせる。
「アタシは行くけど・・・もちろん援護してくれるのよね?」
ニヤリと凶暴な笑みを受けべるクレア。
「もちろんだ・・・・・・アンタと共闘は初めてかな? ご主人様」
速見も心得たとばかりに獰猛な笑いを返し、無銘を構えるのだった。
しかし速見は目の前の出来事に気を取られ、気がつかなかった。自分を追ってきていた筈のマルク達が、いつまでたってもこの場所にやってこないことに。
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