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されど魔王 2

「っふ、礼は言わんぞ?」


 二人の姿を見て、不敵にそう笑うアンネ。そんな彼女を見て、マルクの隣に立っていたエリザベートは、呆れたとばかりに大きく鼻を鳴らした。


「別にいりませんわそんなもの。ワタクシ達が助けに来たのは、非戦闘員のカテリーナさんです・・・どうせアナタは放って置いてもしぶとく生き残るでしょう?」


「気にくわない言いぐさだが・・・カテリーナを救いに来てくれた事については礼を言っておく。感謝する」


「・・・・・・そこで感謝されるのが一番やりずらいですわ」


 はぁ、とエリザベートはため息をついて、気持ちを切り替える。


 何とか合流できたとはいえ、状況は依然として絶望的だ。しかし、マルクの魔法で相手の攻撃が防げるとわかっただけでも収穫だろう。


「マルク、その魔法はあと何回使えますの?」


 エリザベートの言葉に、マルクは息を整えながら答えた。


「・・・そう、ですね。この規模での壁の形成はあと一回・・・小さな壁ならあと5回が限界です師匠」

「それだけ出せれば上等ですわ・・・さて、不愉快ですがここは協力いたしましょうか、騎士アンネ・アムレット」


 嫌々といった様子のエリザベートに、アンネは小さく頷いた。


「異論はない・・・今はこの状況を乗り切る事が重要だ」


 四人を囲っていた骨の壁。その一角にヒビが入る。


 全員が戦闘態勢に入る。マルクは緊張でじっとりと手汗が滲んでくるのを感じた。


 この中で、敵の攻撃を防ぐ手段を持っているのはマルクとカテリーナの二人だけ・・・そしてカテリーナが自身を守る事に精一杯な現状、先ほどの全方位攻撃を防ぐことができるのはマルクだけなのだ。


 この戦闘における、自分の役割の重要性に吐き気がしてくる。


 今まで自分は添え物だった。


 いてもいなくても変わらない、戦況には何の影響も与えられない添え物・・・・・・。



(・・・望むところだ)


 そも、マルクの目標は英雄になること。


 魔王相手に大立ち回りをする現状こそ、まさにマルクが長年夢見た英雄の戦いそのものなのだから。


 ガラガラと骨の壁が崩れ落ちる。ニタニタと気味の悪い笑いを貼り付けた道化師の集団が、再びその両手に火球を宿した。


 魔王ジェミニは知っているのだ。この防御壁がそう多くは使えないという事を。


 つまり魔王は同じ攻撃を繰り返すだけ・・・その単純な作業で勝利を掴む事ができる。


「ワタクシ達に勝機があるとしたら、それはたった一つですわ」


 エリザベートはくるりと周囲を見回すと、鋭い言葉で皆に呼びかける。


「ハヤミ達と合流します。皆さん、走りますわよ」




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