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先輩としての

 決して自分が関わってはいけない・・・自ら手を下す事はできないと考えていた。


 何故なら彼は、もう終わってしまった人間だから。自分の人生を、もう精一杯生きたのだから・・・。


 今の彼はかつて精一杯生きた一人の男の残滓。


 もう彼の生は既に終わっている。ただ、死の機会を逃してしまったというだけの事・・・・・・。


 世界の危機に関心が無い訳じゃ無い。


 だが世界を救うのは今を生きる人間であるべきなのだ・・・そう、考えていた。


「・・・結局のところ、オイラはただ現実から逃げていただけなのかもしれないねぇ」


 彼・・・タケルは寂しげにそう呟いて腰元に下げた剣をちらりと見た。


 数奇な人生だった。


 日の本の国で神の子孫として生まれ、血みどろの生を歩む中、次元の狭間に落ちた。


 この世界では勇者として祭り上げられ、そして世界を救いもした。自分に使命というものがあるのなら、もうそれは果たされたのだろうと、勝手にそう思っていたのだ。


「・・・最後に一つだけ、やらなきゃならないことがあるみたいだ」


 そう言ってタケルはするりと腰元の剣・・・草薙の剣を抜く。そのぞっとするほど鋭利な切っ先を目の前の人物に突きつけると口角を非憎げにつり上げた。


「道を踏み外した後輩をしかってやるのも・・・先輩としての役目かね。なあ、勇者君」


 切っ先の先には墜ちた勇者の姿。両目を閉じて静かに座っていた彼はタケルの言葉を聞いてゆっくりと瞼を開いた。


 両目から目映い七色の光りがあふれ出す・・・・・・。


「・・・お前は、誰だ?」


 最早彼にかつての勇者ショウとしての記憶は無いようだ。不思議そうな顔で問いかけられたタケルは堂々と名乗りを上げた。




「我が名はヤマトタケルノミコト! 12代景行天皇の息子にして、先代の勇者なり! 勇者の先達として道を踏み外したお前を止めに来た!」




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