ショウタイム 2
ランスで突き、大盾でなぎ払う。
その行動の一挙動ごとに周囲の大地は血に染まっていく。大群が相手でもモノともしない暗黒騎士の雄々しき姿・・・しかし対する軍を構成するはただの兵では無い。
周囲を覆い尽くすほどの兵。無数のそれら一人一人が最悪の魔王の複製。魔王本人ほどの実力は持ち合わせていなくとも其の力に迫る実力は持っている。
ランスを突き出したフェアラート。目の前の道化を貫いたその瞬間に上下左右から放たれる炎の球。
一瞬でその漆黒の鎧は地獄の業火に包まれる。
「ォォ・・・オオォォオオオ!!」
ドンッ!
灼熱の炎の中、フェアラートは叫び声を上げて大きく足を踏みならした。
常識外れの膂力で踏みならされた大地。その時に生じた風圧で炎を跡形もなく吹き飛ばす。・・・しかしそんなフェアラートの姿を見て周囲を取り囲む道化達は失笑をした。
灼熱の炎をかき消すほどの踏み込み。
なるほど確かに凄まじい膂力だ。その戦闘力は近接戦闘力で最強と言われた魔王カプリコーンに迫るかもしれない。
強敵だ・・・しかし驚異では無い。
一対一なら確実に勝てないだろう。しかしジェミニの能力の前で、範囲攻撃を持たないフェアラートはあまりにも相性が悪すぎる。
いかに頑丈とはいえ延々とこうやって遠距離攻撃を続けていれば勝ちは揺るがないだろう。
「残念ですネエ・・・暗黒騎士フェアラート。アナタが弱い訳でも私が強かった訳でも無い・・・ただ相性が悪過ぎたのデス」
◇
永遠に続くかに思えた長い戦闘の末、暗黒騎士フェアラートは静かに膝をついた。そしてスローモーションのようにゆっくりと地面に倒れる。
其の姿を見て、騎士を取り囲む無数の道化の一人がパチンと大きく指を鳴らす。その音が鳴り響くと周囲を埋め尽くしていた道化達の姿がかき消えた。
一人残った道化・・・魔王ジェミニが軽い足取りで倒れた騎士の元に歩み寄る。うつぶせに転がっているフェアラートの体を蹴って仰向けに転がし、しゃがみ込んでその体をシゲシゲと眺める。
「さテ・・・頑張ったご褒美に良い物をあげまショウ!」
ごそごそと懐をあさり、取り出したのはドクドクと脈打つ心臓。ジェミニは右手に持ったソレを地に転がったフェアラートの胸元にズブリと埋め込んだ。
「さあ目を覚ましなサイ・・・・・・フリードリヒ・パトリオット!!」
◇




