魔王VS暗黒騎士 3
「ジェミニ・・・双子か・・・なるほどな」
ジェミニが生きていた事に対して驚いた様子も見せずに、フェアラートは地に転がっているランスを拾い上げた。
まだケラケラと笑い続けるジェミニをひょいと見上げて・・・そしてそのままノーモーションで大きく踏み込む。
踏み込みと同時に突き出されたランス。その突きの鋭さは凄まじく、対する魔王に防御や回避の隙すら与えずにその胴体を串刺しにした。
「やりますネ!」
しかし背後から聞こえてくるジェミニの声。目の前には串刺しにされた道化師の姿。三人目のジェミニが隙だらけなフェアラートの背中に火の玉を投げつける。
暗黒騎士の背甲に着弾した火の玉は一瞬で激しく燃え上がり、串刺しにされたもう一人の自分自身ごと業火で包み込んだ。
「フホホホッ!! 燃える燃える騎士が燃えルゥ!! 私の可愛いジェミニごと燃えてしまウ!」
何が可笑しいのか狂ったように笑いながら小躍りするジェミニ。
その姿はまさに狂気という他無かった。
「ふざけた男だ。これで魔王だというのだから信じられん」
地の底から響くような低音の声。
轟と燃え上がる炎の柱から漆黒の騎士がゆっくりと歩み出てきた。
フェアラートはドンと足を踏みならし、大盾とランスを構えるとゆっくりと首を左右に鳴らす。スウッと息を吸い込みヒタリと魔王を見据えた。
一瞬の静寂、そして彼の喉から怒気のこもった叫びが迸る。
「ォオオォオオオオオオ!!!」
強靱な声帯を通して放たれる咆哮。ビリビリと大気を振るわせる。
そしてフェアラートは真っ直ぐに駆けだした。ガッシリと大盾とランスを構えたその姿はまるで要塞。
突進の後に突き出されたランスを、ジェミニは重さを感じさせない身軽さでひらりと回避した。
しかしとてつもない勢いで突き出されたその攻撃は空を叩いた衝撃波で、触れてもいない遠くの枯れ木を粉砕してしまう。
「・・・流石にコレは笑えまセンねぇ」
攻撃の威力を目の当たりにした魔王ジェミニは小さな声でそう呟いた。




