対談
「よく来たな勇者のパーティ一行よ・・・そして久しぶりだな騎士アンネ、そなたの祖国については大変残念であった」
王座に座ったフスティシア王国第十二代国王セサル・フエルテ・フスティシアは威厳ある声音でやってきた勇者一同を労った。
唯一名指しで呼ばれた女騎士のアンネはより深い一礼をする。
「お久しぶりでございます陛下。我が祖国については・・・無念ではありますが今は世界の危機を救うのが先でございます故」
「ふむ・・・世界の危機・・・か。あまり回りくどい話しをするのは余の趣味では無い。単刀直入に議題に入ろうか。そなた達は余の懐刀である騎士アルフレートを貸して欲しいと、そういう事で間違いはないか?」
「その通りでございます陛下。騎士アルフレートは世界最強の騎士・・・世界を救うため、その力をお貸し下さい」
アンネの言葉を聞いてセサルの側に控えていた秘書官の男が立ち上がった。
「・・・陛下、話の途中で口を挟む無礼をお許し下さい」
「よかろう、何か意見があるのかね?」
セサルの許しを得た秘書官の男は深く一礼するとアンネに鋭い視線を向けた。
「騎士アンネ殿、”世界を救う為” というのは確かに耳によい言葉だが・・・書面を見る限りでは我らが最高戦力の力を借りたい理由は単なるアナタ方の尻ぬぐいでは無いのですかな? 勇者が勝手にミスをして魔神に取り込まれたものを何故我らが協力して探さねばならないので?」
その冷たい言葉にアンネは歯をギリリと噛みしめながらも冷静に返事をした。
「・・・おっしゃる通り、我々の過失です。しかし魔王を倒し得る勇者様の体が魔神の力に侵された・・・この危険性はフスティシア王国の皆さんにとっても無視し得ぬモノでは?」
魔王を倒し得る力がさらに強化されたて人類の敵側に回る・・・それは即ち魔王以上の脅威が人類に押し寄せているに他ならない。今は国家の垣根を越えて強者が力を合わせる時なのだ。
しかしそんな時、突然入室してきた人物が柔らかな言葉でアンネの意見を否定した。
「問題ないよ騎士アンネ。例え魔神に飲まれた勇者がどれほどの力を持っていようと我らフスティシア王国の驚異にはなり得ない・・・何故なら私がいるからね」
振り返ったその先にいたのは女性と見まがう美貌を持つ柔らかな金髪の男性。傲岸不遜な笑みを浮かべるその男は ”史上最強” ”騎士の中の騎士” アルフレート・ベルフェクト・ビルドゥ。
「だから騎士アンネ、頼み方を間違えない事だ。もし我が主が君の提案を飲むとしたらそれは自分たちの危機を感じての事では無い、ただ我が主の優しさと懐の深さ故の事なのだと知った方が良い」
アルフレートのその異様な迫力に言葉が詰まってしまうアンネ。しかしそんなピリリとした空気を打ち破ったのは国王であるセサルの言葉だった。
「・・・アルフレートよ、あまりいじめてやるモノではない。彼女らは正義の為に、世界を守るために動いているのだ。例え失敗したとてその行動は称えられるべきモノであり、決して貶される事ではない」
「はっ! 確かにその通りであります我が主。私が浅慮でありました・・・すまぬな騎士アンネよ、先ほどの言葉は全面的に撤回しよう」
アルフレートの謝罪にアンネは静かに首を横に振った。
「いえ・・・私も頼み方を間違えておりました。改めて陛下にお頼み申し上げます・・・どか、我々に力を貸して下さい」




