女騎士の提案
「助っ人を頼るべきだと思うのだ」
勇者捜索を行う為の作戦会議で麗しき赤髪の女騎士アンネは真剣な表情で他の二人を見つめた。
「助っ人・・・ですか? ではギルドに申請を致しましょうか」
聖女カテリーナの言葉にアンネは首を横に振る。
「いや、この前の魔王討伐でも議論したように基本的にギルドの冒険者達はこういったリスクが高すぎる依頼は受けない・・・そうでは無くて世界の危機に立ち向かう義侠心を持ち、それでかつ高い実力を持つ者に助っ人を依頼すべきだと私は思う」
アンネの言葉に隣で聞いていたタケルはその細い目をさらに細めて問いかける。
「ほほう・・・それで騎士さんはその助っ人とやらに心当たりがあるのかい? その条件を満たしている人物はそうはいないと思うのだけど・・・」
「ああ、心当たりはある・・・たぶん二人も知っている人物だ」
「へえ、ちょいとオイラには思い浮かばないんだけど・・・その人物って?」
アンネは少し間を置いてゆっくりと言葉を放った。
「人類最後の希望・・・史上最強の騎士 ”アルフレート・ベルフェクト・ビルドゥ”」
「・・・・・・いやいや騎士さん、そいつはちょいと無茶な話じゃねえかい? だってその人ってあのフスティシア王国の騎士長様だろう? 国の最高戦力をあのフスティシア王国が助っ人に貸してくれるかね」
「タケルの心配もわかる・・・しかし今はまさに人類の危機だ。きちんと現状を伝えて助力を請えば噂に聞く最強の騎士ならきっと力になってくれるだろう。かの国は正義を尊ぶらしいから行くだけの価値はあると思う」
真っ直ぐなアンネのその言葉にタケルは苦笑いを浮かべた。
永きの時を生きるタケルにとって正義という言葉ほど危ういモノは無いという事はもちろん知っていた。
その言葉は立場によっていくらでも変化しうるモノで、誰かにとっての正義が他の誰かの悪であるなんて事は日常茶飯事だからだ。
しかし正義という言葉が信用ならないというだけでアンネの提案を蹴ってしまうには、騎士アルフレートの戦力はあまりにも魅力的すぎる。
もし万が一交渉が成功したのなら間違いなくあの人類最強の騎士は最高の助っ人となってくれる事だろう・・・。
ならばこそ、失敗することを前提にしてもフスティシア王国に足を運ぶ価値はあるかもしれない。
敵が魔神である以上、戦力はいくらあっても足りないのだから。
「・・・了解だ騎士さん。それじゃあ行こうか騎士の国 ”フスティシア王国” へ」
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