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アーテファ 10

 フムル族の集落で怪物を迎え撃つためのバリケードを作っていたフィエゥは森の奥から猛スピードで走ってくる人影を発見した。


 もしや例の化け物がやってきたのかと体を硬くする。目を凝らしてよく見るとその人影は集落の少し前までやってくると力尽きたかのようにぱたりと地面に倒れた。そしてその顔はフィエゥのよく知ったモノだと気がついたのだ。


「・・・アーテファ?」


 目の前で倒れた人物は額から見事な角が生えており、骨格は獣と人の中間といった風な荒い体をしている。


 しかしその顔は間違いなく大好きなアーテファその人だった。


「・・・ごめんフィエゥ。ちょっと疲れちゃって・・・肩を貸してくれない?」








 フィエゥに支えられて集落の中に入ったアーテファ。族長の前にたどり着くと自分が見てきた事を全て正確に伝えた。


「・・・今は戦士ハスタが足止めをしてくれていますが・・・・・・いかにハスタが優れた戦士とはいえ長くは持たないでしょう」


 アーテファの言葉に族長は重々しい表情で頷く。


「・・・そうか戦士達は勇敢に戦って散ったのだな。レゾの占いで知っていたとはいえ辛いモノだ・・・アーテファ、ありがとう。こんなにボロボロになるまで戦ってくれた事に感謝の言葉を贈ろう」


「いえ、感謝なんて・・・それより族長、何か手はあるのですか?」


 その言葉に族長は静かに首を横に振った。


「残念ながら私に策は無い・・・私もここに残った皆も例え勝てない戦だとしても最後までこの地で戦うつもりだが・・・強制はしないよアーテファ。君が逃げたいのなら船と食料を君にあげよう」


「族長・・・いえ、結構です。私も腐っても最強の鬼種の端くれですから。最後まで一緒に戦わせていただきます」


 アーテファは最後まで戦い抜く決意を族長に伝えたその時、背後からシャーマンのレゾがやってきた。


「お母さん!」


 アーテファにつきそっていたフィエゥが声をあげる。レゾは娘に向かって優しく微笑みかけるとアーテファに向き直って表情を引き締める。


「その言葉を嬉しく思いますよアーテファ。アナタが戦ってくれるというのならほんの少しですがあの化け物に勝てる可能性が出てきました」


「・・・レゾ、何か手があるの?」


「ええ、あの化け物を倒すことは敵いませんが・・・一子相伝の秘技によって封印する事は可能です」


 そうは行ったモノの成功の確率は低いのだろう。レゾの表情は硬く重かった。


「アーテファ、アナタの力が必要です・・・協力してくれますね?」


「もちろん協力させてもらうわ」


 絶対的な死が迫ってくる。


 果たしてレゾの作戦は、圧倒的な力を持つ化け物を相手に通用するのだろうか。


 終焉の時は


 近い。



 

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