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アーテファ 5

「・・・何を言って・・・」


 思わず口ごもってしまうアーテファ。


 しかしそんな態度ではレゾの言葉を認めたも同然だった。


「私の精霊術による占いは今まで外れた事がありません・・・ごまかさなくても結構ですよ」


 その言葉でアーテファの全身の毛が逆立ち、一瞬で臨戦態勢に入る。体を流れる鬼種の血が目の前の女を八つ裂きにしてしまえと彼女にささやきかけた。


(・・・いや、それは駄目。私たちは争いを嫌って祖国を離れたのだから)


 沸き上がる鬼の闘争本能を理性で押さえ込む。


 争いを嫌った自分たちが逃げてきた地で争いごとを起こしたら本末転倒だ・・・それによそ者である自分たちに良くしてくれたフムル族のみんなに迷惑をかけることはできない。


「・・・確かに私たちは人間ではありません。それで、どうするのですか? もし私たちが恐ろしく、出て行って欲しいというなら大人しく従う覚悟はできております」


 覚悟を決めてそう言ったアーテファ。


 しかしレゾは少し微笑んで空を見上げると急に話題を変えた。


「我が娘・・・フィエゥは同世代の子供と比べて少し知恵が遅れていましてね」


「・・・・・・それがどうかしたのですか?」


「いえ、そんな事は関係なく可愛い娘なのですが・・・そうなったのには訳があるのです」


 そしてレゾは懐から何かを取り出してそっとアーテファに見せた。それは立派な細工が施された小さなアミュレットである。しかし何故かソレはアーテファの視線を釘付けにして話さないような怪しい魅力を放っていた。


「これはフムル族に代々伝わる秘宝 ”魔封じのアミュレット”です。これはその世代のシャーマンの職についた女性が身に付ける習わしとなっています」 


 アミュレットについての説明を始めるレゾ。しかしアーテファは彼女の掌に置かれたそのアミュレットから視線を外す事が出来なかった。


 そんな様子に気がついたのだろう。レゾはそっとアミュレットを懐に戻してから続きを話し始める。


「このアミュレットは強い霊力を持っています・・・扱うには相応の力が必要です。幸い私にはこのアミュレットを扱うだけの素質を持っておりましたので無事シャーマンとしての勤めを果たすことが出来ているのです」


 彼女が強い力を持っている事は見ただけで分かる。


 しかしこの話がフィエゥが知恵遅れな事とどう関係があるのだろうか。


「我が娘のフィエゥは・・・その・・・なんというか才能がありすぎましてね」


「才能が・・・ありすぎる?」


「ええ・・・彼女の身に宿る霊力は私を遙かに凌ぎます・・・しかし強すぎる力は時としてその身を蝕むものなのです。フィエゥはその身に宿す霊力が強すぎるが故に普通の人としての成長が著しく遅いのです」


「・・・そうだったのですか。しかし、何故今このタイミングでその話を?」


 アーテファの疑問にレゾは微笑んだ。


「フィエゥはその高い霊力故に人の持つ本質をかぎ分ける事が出来ます・・・アナタは随分フィエゥに懐かれているようだ。その正体が人で無いとはいえ、その本質は限りなく善なのでしょう。ならばこそフムル族は人で無いという理由だけでアナタ方を追い出す事はありません・・・族長には前もってこのことを報告していますが、彼もまた同じ思いでした」


 アーテファは驚いた。


 フムル族は・・・この人間達は我々が人で無いと知って尚受け入れると言っているのだ。それはアーテファの人生の中で初めての経験だった。


「改めてようこそ我らが島へ。私たちはアナタ方を歓迎しますよアーテファさん」



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