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伝説の続き

 角の生えたゾンビは真っ直ぐに突っ込んでくると、その鋭い鉤爪を振り下ろした。良く切れるナイフのように鋭利な爪の先端がギラリと光る。


 素早い攻撃だ。しかし単調なその一撃をまともに受ける訳も無く、マルクはグラディウスの肉厚の刃を一閃して迫り来るゾンビの右腕を切断。同時に相手の胸部に蹴りを入れると距離を取った。


 次の瞬間、遠方から放たれた光弾が体勢を崩したゾンビの胸に着弾する。一瞬の間が空きゾンビは体の内側から破裂して粉々に砕け散る。


 しかしそれで終わりでは無かったのだ。


 先ほどの墓の周囲からずるりと無数の手が地面をかき分けて地上に這い出してくる。姿を現した複数のゾンビ達は、皆その額に見事な角が生えていた。








「この島の ”禁じられた森” と呼ばれるこの場所は、かつて二つの種族が共存して暮らしていました」

 シャルロッテは静かに語り出した目の前の女性の言葉に耳を傾ける。


 その声は声量こそ小さいながら、透き通るように心地よく一言一言がじんわりと頭の中に染みこんでいくような不思議な響きを放っていた。


「二つの種族・・・即ち ”人” と ”鬼” です」


 ”鬼”


 シャルロッテは小声で呟いた。


 速見から聞いた極東の島国で生息していたという亜人の事だろうか? 


「かつて ”鬼” の祖となる個体は次元の歪みを渡って異なる次元からこの世界にやってきました。その鬼の力は圧倒的で、降り立った小さな島国はたった一匹の鬼に制圧されてしまったのです」


 そう語る女性の瞳は依然としてヒタリと閉じられたままだ。


「月日は流れ、鬼は占領した土地の女と子をなしてその数を増やしました。鬼は亜人種でしたが、人と子をなす事ができたようなのです」


 そうして鬼の一族は長い時間をその島の支配者として暮らしてきた。


 そう


 その蛮行を見かねて他国から一人の男がやってくるまでは・・・。


「あるとき、島に ”勇者” を名乗る男がやってきました。名を ”ヤマトタケルノミコト”と名乗るその男は、まるで手慣れた仕事であるかのように島を占拠していた鬼の大多数を一人で屠りました」


「それはもしかして ”ヤマト国”の話ですか?」


 シャルロッテの問いに女性は静かに頷く。


「ええ、その勇者の名にちなんでその島国は ”ヤマト国”という名になったそうです。ここまでの話がヤマト国に伝わる建国の伝説・・・ですがこの伝説には続きがあったのを知る人は少ない」


 女性はそっと自身の首からぶら下がっているアミュレットを触った。そして決心したかのように顔をあげると再び口を開く。


「お話ししましょう。伝説の・・・その先を」


 

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