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援護

「・・・ゾンビか、やっかいな相手だな」


 速見は魔王サジタリウスの右目を大きく見開いて遠く離れたマルクの戦闘を観察していた。その背後には血にまみれた鬼の死体が転がっていた。


 確かに鬼は凄まじい力を持っていた。常識外れの耐久力に自己再生能力、パワーもありながら獣の俊敏性もあるというハイスペックな存在だ。


 しかし逆に言えばこの鬼の強みはそれだけだったのだ。


 戦い方は稚拙。集中力も無く、四方八方に飛び回る太郎の動きに翻弄されては速見の狙撃で少しずつその体力は削られていった。


 いかに優れた身体能力を持つとはいえ、それに頼り切った素人に負けるほど速見も太郎も弱くは無い。


 結果として危なげも無く完勝できてしまった訳だが・・・どうにも敵の様子が妙だったのだ。


 先日洞窟内に閉じ込められた経緯から見るに、この鬼種は本来前衛で戦うタイプでは無い。策を練り、自分の代わりの巨人を召還して戦う後衛タイプなのだろう。


 しかし先ほどの戦闘で見せた動きは近接戦闘を生業としている戦士の身体能力を持っていた・・・本来は後衛であるこの鬼種に何者かが無理矢理力を与えた、そう考えた方が妥当なのだろう。


 考えられる可能性はいくつかある。しかし今は戦闘前に千里眼で確認したマルクと合流するのが先だ。


 無数のゾンビに囲まれていたマルク。彼の実力ならすぐにやられる事は無いと思うが、ゾンビの量によっては危ないかもしれない。


 速見は周囲を見回して近辺で一番背の高い木を発見すると身軽な様子でするすると木に登っていく、枝振りの良い場所に腰掛けると ”無銘” を構えて先ほどマルクを視認した方角に銃口を向ける。


「さて、手早く片付けるか」









「うぉおおお!!」


 マルクは鋭く雄叫びを上げながら目の前のゾンビに斬りかかる。グラディウスの肉厚の刃が腐りかけの両足を切り落とし、その機動力を削いだ。


 足を失ったゾンビの頭を踏み砕いてトドメを刺す。速見からの援護もあって、状況は好転していた。堅実に少しずつでも頭数を減らしていけば無事に切り抜けられるだろう。


 本職では無いマルクの魔法を使える回数は良くてあと二回といったところか・・・この後何があるかわからない。使わないで済むのなら温存しておきたいところだ。


 襲いかかってきたゾンビが光弾に撃ち抜かれて内側から破裂する。マルクは勢いよく破裂したゾンビの上を走り抜け、墓から這い上がったばかりの一体に斬りかかった。


 やはり戦闘力自体は高く無いとはいえ、ゾンビはやっかいだ。一体一体確実に屠らなくては地を這ってでも襲いかかってくる。


 しかしこの調子ならもう少しでこの場は切り抜けられそうだった。


 マルクが安堵していると、奥の方にあった石を積み上げられて作られた他の墓とは様式の違う墓の下から何者かがゆっくりと土をかき分けて起き上がってきた。


 灰色の肌、腐敗して千切れ掛かった肉。


 ソレは一見普通のゾンビと同じに見える。しかしその額には人外を象徴するかのように一本の立派な角が生えているのだった。


「魔族の・・・ゾンビ?」


 マルクは気を引き締める。


 確立は低いのだが魔族がゾンビ化した場合、人間から成るゾンビよりも強い個体になる事が多い、高い確率で先ほどまでのゾンビ達より強力な個体だろう。


 角の生えたゾンビはゆっくりとマルクの方を見ると、口を大きく開けてもの凄い速さで襲いかかってきた。


 明らかに通常のゾンビとは比にならない素早さ。マルクはグラディウスを構えた。





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