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ゾンビ


「”サンダーボルト”」


 マルクは目の前に群がる大量のゾンビに向かってサンダーボルトの魔法を放つ。魔法で構成された偽りの雷がゾンビを焼き、周囲に腐った肉の焦げる嫌な臭いが漂った。


「クソッ! 数が多すぎる!」


 今の魔法で巻き込んだゾンビは多数、しかし後から後から新しいゾンビが地中から這い出してきてキリが無い。


 背後から忍び寄ってきた一体をグラディウスで首を切り落とす。しかし首を失ってなお体だけで襲いかかってくるゾンビ。


 マルクは襲い来る体だけのゾンビに体当たりをして体勢を崩すと足を切り落として機動力を奪った。


 ゾンビのやっかいな点はその耐久力にある。


 生物の死体に死霊系のモンスターが取り付いて生まれたのがゾンビだ。もともと生きてはいないので頭を切り落とそうが心臓を貫こうが体を動かしているエネルギーが尽きるまで動き続ける。


 ゾンビに有効な戦術は広範囲の魔法で一気に焼き尽くすこと・・・しかし魔法が本職では無いマルクには次から次に新手が現れるゾンビすべてを魔法で対処する事ができない。


 ここぞという時に効果的に魔法を使わないとすぐに魔力切れを起こしてしまうのだ。


 自分の実力の無さに吐き気がする。マルクは目の前に広がる敵の群を睨み付けながら己の無力を呪った。


 前にアンネに指摘されたように自分は所詮、剣も魔法も中途半端に学んだ半端物でしかない。だからこんなゾンビの群なんかに手こずっている。


 弱気になる。


 真綿で首を絞められるように緩やかに劣勢に追い込まれている。


(・・・俺の歩んできた道は間違いだったのか?)


 心が折れそうになったその時、頭に浮かんだのは自らを育ててくれた師の言葉だった。





『強くなるために、夢を叶える為に手段を選ばずがむしゃらに努力する事が間違いな筈がありませんわ』





(そうだ・・・俺は間違ってなんか無い。間違ってなんか・・・無いんだ!)


 眼に光が戻った。


 弱気になっていた。


 敵の数に、相性に心が負けていた。


 自分はまだ全てを出し尽くしていない。


 がむしゃらに足掻いていないのだ・・・。


 マルクは腰のポーチを手で漁ると一本のポーション瓶を取り出した。それをゾンビの群の真上に放り投げると宙に浮かぶ瓶に目がけて拾った石つぶてを投擲する。


 つぶては瓶に命中すると瓶を粉々に砕き、中を満たしていた液体を周囲にぶちまける。その液体を被ったゾンビ達が苦悶のうめき声をあげた。


 聖なる祝福が施された回復のポーションは死霊系の魔物にダメージを与える。冒険者の基礎知識だ。


 知識は持っているだけでは役に立たない。ソレを実践で利用してこそダイヤモンドの輝きを放つ。


 動きの止まったゾンビにマルクは再びサンダーボルトの魔法を放った。


 先ほどよりも多くのゾンビを巻き込んで偽りの雷は多くの焼き墨を作っていく。


 しかしマルクは気がつかなかった。


 魔法を放ったとき、こっそりと音も無く背後から近寄っていた一体のゾンビの存在に・・・。


 ガバッと開かれた口、したたる唾液と鋭い犬歯。気がついた時にはもう遅く、ゾンビの歯がマルクの首元に迫り・・・どこからともなく飛んできた光の弾がゾンビの頭を撃ち抜いた。 頭を撃ち抜かれたゾンビはふらりとよろけ、そして内側から爆散する。


 マルクはその見知った光景に弾の飛んできた方角に振り返った。


「・・・ハヤミ?」



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