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鬼種

ソレは獣の俊敏性を持って縦横無尽に駆け回る。


 銃の照準を絞らせない不規則な動きで距離を詰めてきたソレは速見の目の前でカパリと口を開いた。


 ぬらぬらと唾液で濡れた鋭い犬歯がキラリと光る。


「舐めるな!」


 接近されたとて迎撃手段が無い訳じゃ無い。


 速見は構えていた無銘を手に馴染む軍刀の形に変化させた。鋭く踏み込むと突進してきたソレの右腕を切り飛ばす。


「ギュルァアア!!??」


 切断面から血を吹き出しながらソレは苦痛に顔を歪め、大きく飛び退いて速見から距離を取ろうとする。


 しかしソレの背後から音も無く近寄っていた太郎がその無防備な首筋に思い切り噛みついた。


 柔らかな首の肉が半分ほど食いちぎられ、ソレは力なくその場に座り込む。


 実力差は誰が見ても明らかだった。しかしソレは青ざめた震える唇をそっと開いて呪詛の言葉を紡ぐ。


 ゆっくりと・・・そして、血の混じったその言葉はだんだんと激しくなりやがては物理的な重みを帯びてくる。


「・・・なんだ?」


 呪詛はドロドロと粘着質な質量を持って傷ついたソレの身体に巻き付き、傷口に入り込んで出血を止める。



 ドクンッ



 ソレの鼓動が高鳴った。


 そしてソレはその存在を別のモノに変えてゆく。


 骨格がメキメキと音を立てて組み変わり、人間の子供ほどの大きさだったソレは見上げるほどの大きさに変わる。


 筋肉は隆起して肌は急な成長に絶えきれずにズタズタに裂けた。


(・・・これは・・・)


 速見は身体をぶるりと振るわせる。


 その姿はまさにかつてヤマトの国で速見に致命傷を負わせた筋骨隆々の ”鬼種” そのものの姿だったのだ。


 咆哮


 大気をビリビリと振るわせるその咆哮。


 がりがりだった先ほどまでと打って変わって圧倒的なまでの質量を持つその身体。ギロリと睨み付けたその視線は圧倒的な威圧感を持っていた。


 鬼がその巨腕を振り上げて速見に襲い来る。


 速見は無銘をライフルに変化させて素早くその額を撃ち抜いた。


 早撃ちにも関わらず圧倒的な正確さで放たれた光の弾丸は鬼の額を撃ち抜き、その体内で破裂、頭の上半分を吹き飛ばす。


 衝撃でふらりと後ろによろける巨体。しかし次の瞬間には頭の再生が始まる。


「ちくしょうまたかよ!? こういう敵は苦手なんだよ!」



 

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