紅茶
「・・・・・・ここはどこ?」
シャルロッテは急に変化した周囲の景色を見て呆気にとられたように呟いた。しかしこの感覚には覚えがある、クレアによってこの近辺まで転移してきた時と同じような感覚・・・。
(ならば私は転移魔法でどこかに飛ばされた・・・でもそれにしては・・・)
考えられるのは三人を分断しようとする敵の攻撃だろう。しかしそれにしては奇妙だ。何せシャルロッテが飛ばされたこの場所は・・・おしゃれな調度品で飾られた木造の部屋の中であるように見えた。
いつの間にかシャルロッテが座っていた椅子の目の前には小さな丸いテーブルが置かれており、その上には湯気を立てている熱々の紅茶が艶やかな白磁のティーカップに並々と注がれている。
「飲まないのですか?」
柔らかな声が聞こえてシャルロッテはハッと顔を上げる。
シャルロッテとテーブルを挟んで向かい合うようにして椅子に腰掛けていたのは見知らぬ女性。
柔らかな長髪と静かに閉じられた両目。
そしてその首元には怪しく光るアミュレットがぶら下げられていた。
(もしかして・・・これは ”死のアミュレット”?)
死のアミュレットを見たことが無いシャルロッテには目の前の女性が首に提げているソレが魔神を封じている秘宝なのかの判別はつかない。
しかしそのアミュレットは怪しい魅力を持っていてシャルロッテの視線を引きつけてならないのだ。
「飲まないのですか?」
再び問いかけられる。
しかしシャルロッテとてこんな状況で誰ともわからない人物から勧められた飲み物を飲むほど素人では無い。
「・・・アナタは何者ですか?」
シャルロッテのその質問に女性は小首をかしげる。その瞳はずっと閉じられたままだ。
「何者か・・・ですか。難しい質問ですね。それを語るには少し長い時間がかかるでしょう・・・だから」
そしてそっとシャルロッテの目の前にある紅茶を指し示す。
「どうぞ飲んで下さい。長い話になると思います」
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