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シャルロッテは暗闇の中自分に出来る事を必死に探していた。


 最初に思いついたのはファイア系統の魔法だ。魔法で炎を出せばその光源で洞窟内が照らされるだろう。自分の視界のみならず仲間のアシストもできる筈だ。


 しかしその作戦は断念せざるを得なかった。


 この暗闇の中、敵も仲間もわからぬ状況で攻撃魔法を放つと仲間に当たってしまう危険があるからだ。

 熟練の魔法使いなら極限まで威力を押さえたファイアボールの魔法を宙に浮かべて光源にする事が可能だという。


 しかしシャルロッテは魔法使いとしての練度が浅く、細かな魔力コントロールをすることができない。今まで生来の魔力量に頼った戦い方をしてきたツケが回ってきたのだ。


 洞窟内で大きな戦闘音が鳴り響いている。


 恐らく暗闇でも視界が阻害されない速見と太郎が戦っているのだろう。敵はあの巨人だ、例え巨人の視界が阻害されていたとしてもこの狭い洞窟内で適当に腕を振り回すだけでも脅威になる。


 シャルロッテに今できることは洞窟の隅で攻撃に当たらぬように小さく縮こまっている事だけだった。


 ギリリと歯を食いしばる。 


 悔しかった。


 何も出来ない自分が情けなくて涙が出てきそうだ。


 シャルロッテが自分の無力を嘆いたその瞬間、洞窟の一角で目映い光が溢れた。


「・・・・・・え?」


 漆黒の闇を照らしたその光はしかし目を刺すような激しい光では無く、それは見るモノを包み込むように優しく、しかし雄大に広がっていく。


 そしてその中心にいたのは一匹の白狼であった。








「しかし下僕が太郎ちゃんを初めて連れてきた時は驚いたよ」


 クレアは自室で紅茶の準備をしながらそう言った。


 洒落た丸テーブルの上に白磁のティーカップを二つ置き、ポットを手にとってカップへ紅茶を並々と注ぐ。


 ふわりと紅茶の豊かな香りが部屋中に広がった。


「ふん、そのサイズのカップを準備するとは私に対する嫌がらせか?」


 不機嫌そうにそう言ったのはテーブルの上にちょこんと腰掛けたミニチュアサイズの骸骨、魔王パイシスだ。


「そうだと言ったら?」


 楽しそうにそう言うクレアを鼻で笑うと、パイシスはパチンと指を鳴らした。


 次の瞬間ミニチュアサイズだった骸骨の姿は消え、丸テーブルの横に置かれている椅子の上に顔色の悪いやせた魔法使い風の男が腰掛けていた。


「当てが外れたなクレア・マグノリア。ありがたく紅茶を頂くとしよう」


 そう自慢げに言った顔色の悪い男・・・魔王パイシスはカップを持つと優雅にソレを啜る。しかし少し熱かったのか顔をしかめてソーサーの上にカップをおくのだった。


「・・・元の大きさに戻るどころか生前の姿になれるようになったの」


 驚いたように目を見開くクレア。その表情をみて気分が晴れたのかパイシスは自慢げに顔をほころばせた。


「まあな。時間は死ぬほどあったのだ。ならばこういう魔法を準備するのも当然というもの・・・まあ、私の事はいいのだ。それで? あの狼がどうかしたかね」


 クレアはその質問にすぐには答えずにパイシスと向かあう椅子に腰掛けるとカップを手に取り紅茶を一口飲んだ。


 そしてひとしきりその風味を味わった後にポツリと口を開いたのだ。


「”神ヲ喰ラウモノ”」


 その言葉にパイシスはハッと息を呑む。


「・・・間違いないのか?」


「ええ、私はかつてアレと同種の存在を見たことがある・・・まさかこの世界に生き残りがいたなんて信じられないわ。太郎ちゃんはまだ成長しきっていないけど、もしその力が覚醒したなら・・・対魔神の切り札になるかもね」

 


 ”神ヲ喰ラウモノ”



 それは次元を超えてあらゆる世界の神々を喰らいつくす魔獣。


 またの名を







”フェンリル”








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