表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/234

洞窟の利

 まずは先手を取らねばと速見は素早く狙いを定めると巨人の頭部に狙いをつけて無銘の引き金を引く。


 放たれた光の弾丸は真っ直ぐに飛んでいき、狙った場所を寸分違わず撃ち抜いた。そして巨人の頭部に着弾した瞬間、光の弾丸は破裂して頭部の右半分を吹き飛ばす。


 鮮やかな早業。


 尋常な生物ならば即死の一撃を受けて漆黒の巨人はふらりとその巨体を揺らす。


 しかし次の瞬間。踏みとどまった巨人の頭がグジュグジュと湿った音を立てて再生を始めた。


「・・・高速再生か、やっかいな」


 速見がそう呟くと同時にその両サイドでシャルロッテとマルクが動いた。


「”メガ・ファイアボール”」


「”サンダーボルト”」


 再生を始めた巨人に向けて放たれる二つの攻撃魔法。


 巨大な火の球と偽りの雷がその巨体を襲い、巨人は苦痛の叫び声をあげる。


「グォオオオオォオ!?!!」


 子供がだだをこねるようにその腕を振り回し始める巨人。


 通常なら当たる筈も無い大ぶりな一撃なのだが、なにぶんこの場所は狭い洞窟内だ。こんな狭い場所で巨大な腕を振り回されたらたまったモノでは無い。


「この場所は不利だ! 外に出るぞ!」


 速見の言葉に頷いた一同は暴れる巨人の腕を何とか回避しながら洞窟の入り口へと向かう。入り口の光が見えてきたその時、外で待ち構えていた小さなシルエットが見えた。


「・・・なんだ?」


 速見は思わず呟く。


 一見人間のようにも見えるその存在。大きさは子供より少し大きいくらいだろうか? かさかさに乾いた肌、肩口に治りかけの傷があり全身が自分の血で濡れている。


 ボサボサの体毛とニュッと額から飛び出した角の存在が速見にとある記憶を呼び起こさせた。


 即ち、自身をヤマトの国で殺した種族。



 ”鬼”



「・・・まさか」


 速見は鮮血の記憶に思わずぶるりとその身を震わせる。


 ソレは嬉しそうに顔を歪ませるとシワだらけの細い手でバンと地面を叩く。それに呼応するかのように大きな衝撃破が発生し、洞窟の入り口をぐらりと揺らした。


 何か支えを失ったかのように崩れ落ちる入り口の天井部分。


 落石の中最後に見たのは鬼とおぼしき存在がその顔を大きく歪めながら高笑いをする姿。


 そして入り口部分は落石によって完全にふさがれ、一同は巨人と供に洞窟の闇に捕らわれるのであった。


 洞窟全体が崩れなかったのは不幸中の幸いといえなくも無いが非常にマズい状況だ。何せ自分の足下も見えぬ暗闇の中、状況を判断できるのは魔王サジタリウスの千里眼を持つ速見と察知能力に長けた太郎だけ。


 暗闇の中でマルクとシャルロッテは完全に動きを封じられた。


「グルォオオオ!!」


 巨人の叫び声が聞こえる。


 どうやら自己再生が終わったのだろうか。速見は絶望的な状況の中、役に立たない左目をぱちりと閉じて魔王の右目を見開いた。


 あの巨体で暴れられる前に倒しきる。それが出来るのは速見しかいないのだ。


「行くぞデカブツ!」


 速見は自分を奮い立たせるように大声をあげた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ