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3.
「ねえ、将来の夢みたいなものってある?」
机を挟んで反対側に少女が座っている。秋風が教室の窓から吹き込み、彼女の短めの髪がふわりと風になびく。
「私は分からない」
「中学卒業して、高校行って、大学行って、それで就職……」
「私って何の為に生きているのかな」
少女が口を閉じ教室の中が静まり返る。そこでようやく僕は口を開く。
「そんなの僕にだって分からないよ」
「なあ転入生ってどんな感じだろうな、可愛いかなあ」
遼が昼食の弁当を頬張りながら聞いてくる。
「なんでそんなに期待してるの? 僕らにはあんまり関係無いことでしょ」
僕は溜息をつく。
「まあそうだよな、俺らモテないもんな」
遼は別に容姿は悪くないと思う。むしろ良いほうかもしれない。しかし何故だろうか、彼に恋人ができる気配は無い。まあ彼女が出来ると独りぼっちになって困るのは僕自身なのだが。
睡魔と闘いながら午後の授業を何とかこなす。放課後は遼と談笑しながら帰る。いつもと変わらない日常に安心しながらも、少しばかりのつまらなさを感じていた。