14.
彼女の悩みは深刻さを増している様に見えた。
「私もう死にたいの」
「ゆいも一緒に死んでくれる?」
僕も少しだけ、ほんの少しだけ彼女の悩みに共感し始めていた。
「大人になってもずっと同じ生活を続けていくのかな?」
「私は何の為に生きていくのかな?」
僕はこれからどこに進むのだろう。勉強して、いい大学に入って、それから就職して。それから、それから、それから?
定年まで働いて死ぬのかな。
でもこれからもっと色々な新しいことに出会うんだ。きっと新しいことに。
でもゆい、苦しいことも沢山あるよ。苦しくて辛いことが沢山。
私は今のままでいい。今のままで。でもね今のこの退屈な時間はそろそろ終わらせてもいいと思うの。私は今のこの幸福な時間だけを記憶に刻み付けて終わらせたいの。
10月頃だろうか。佳澄の計画が決行された。彼女の部屋の中ほどには丸いテーブルが置かれていて、その上に小袋に入ったカラフルな錠剤や市販薬のパッケージが乱雑に積まれている。
「この薬何?」
佳澄は微笑む。
「色々だよ色々。これ全部飲んだら死ねるかも」
「かなり多いね」
僕は苦笑いする。
それからのことは佳澄も覚えてないらしい。薬を飲み始めたところまでは記憶があるらしいが。僕はというと彼女の部屋に入った辺りから全く記憶がない。脳の記憶領域では病室で目が覚めたところから記録が復活している。忘れていた中学時代の彼女との思い出の大半は思い出すことが出来ていたが、しかしながら未だにその部分だけは欠けている。