惑星アウシュリネの歴史
・誕生と二つの月
誕生は太陽系と同じく原始惑星同士による衝突による大型化で熱進化、この惑星系ではハビタブルゾーンに三つほどの惑星がひしめき合っており、その三つのうちの一番内側を回るのがのこアウシュリネである、しかしその環境はテラフォーミングするまで過酷そのものであり不毛な惑星だった、なぜハビタブルゾーンに居ながら生命が一切存在しなかったのか?それは二つの月がそれぞれ語りかけてくれる、元々アウシュリネの内側にはもう一つの惑星があり、天文学では幻の第二惑星と呼ばれるのがこの名も無き星である、現在はその残骸が二つの月としてアウシュリネを周回している、おそらくその幻の第二惑星がアウシュリネ最接近の際に天体衝突を起こしバラバラに砕けたものだと思われる、その際の破片などがアウシュリネを重爆撃期のように襲い過酷な環境を作ったのではないかと言われている
・開拓期
第三惑星パサウリスの軌道文明の開花により惑星間航海時代が到来、テラフォーミングが始まったのはアウシュリネ星齢57億年ごろだと言われている、まずはアウシュリネの大砂漠に植物を植える作業から始まるが、永久凍土の星である第四惑星ジエズドレよりも過酷な環境は開拓団を確実に蝕んでいた、そんな開拓が進まない中で第四惑星の開拓中止、及び放棄が決定される、これはジエズドレに持ち込んだテラフォーミング用のコケ類が地中の微生物と結合、生み出されていた大気が有毒物質に変わってしまったのである、もちろん現地開拓団の懸命な対処は続けられたが特定の地域ならまだしも惑星全体に広がるコケ類の暴走はもはや誰にも止められなくなっていた、第四惑星の放棄によりハビタブルゾーンに存在する未開の星はもうアウシュリネしか残っていなかった、人口爆発による母星の催促は毎日のように飛んできた、軌道上のステーションはもはや万策尽きていた、植えても植えても太陽にやられてしまう植物たち、この頃のステーションの航海日記には「背後も目の前も閉塞感だけしか無かった」と記録されており、どれほどの焦燥感に駆られてたのかが測り知れる、しかしそんな閉塞感漂う中で最悪の事態が起こってしまった、ボロボロになって帰還した第四惑星開拓団から謎の病死者が発生、これはほんの序章に過ぎなかった、この時期を境に母星パサウリスで謎の流行り病が蔓延、対策も取れぬまま政治経済などが停止、もはや惑星国家はその短すぎる生涯を閉じた、人々はもはや民族の存続のために戦い文明は崩壊、そして政府中央を占拠していた民族により大量破壊兵器が発射される、民族間の大量破壊兵器による戦争が始まっていく、さらに不幸な事に最後の支援物資のシャトルに混乱による検疫不足のため流行り病が紛れ込んだ、軌道上のステーションにもカウントダウンが迫る中、ある科学者が一つの提案をする
「第四惑星の粘菌は使えないだろうか?」
この提案はいわゆる賭けのようなもので第四惑星の開拓放棄はこの粘菌とコケ類が結合したためであった、生命力は永久凍土の惑星のほぼすべての地に根を下ろせるほど強く、惑星を覆ってしまうくらいに繁殖力もある、しかしそれは氷として存在していた「水」があったからである、この星はいわば赤い砂漠と分厚い熱風が吹く大気をまとっている、つまり水なんて存在すら半信半疑であったし砂漠環境に強い植物を植えても熱風に吹っ飛ばされていた、しかし植物がある程度の間は根付くと言う事は水は確かに存在するということ、事実今回の提案は決して水を考えてないという証拠に「極冠を使えないだろうか?」という検証があった、これは勿論初期の段階でここに植物を植えており試験が進められていた、しかしこの星の極冠は冬の極夜にしか出現しない事、人口太陽を持ってしても過酷な気温、そして大気の動きからくるブリザードにより全てが持っていかれてしまう、事実この極冠で犠牲になった研究者は数知れず、しかし、第四惑星を飲み込めるこの不思議な粘菌ならどうだろうか?もちろんステーションによる観測も必要だろうがもはやみんな病に侵されており何日機能停止して巨大な人工衛星になりかねない状況が危惧されていた、しかも今回のテラフォーミングでラストチャンスだという事も悟っていた、そこで大気中の比較的安定する気流と気流の隙間地帯への観測機の投入を決定する、観測機といえば飛行機を思い浮かべる人が大多数だと思うが実際は生体工学を利用した文字通り「生きている観測機」なのだ、人工知能による判断は複雑なプログラムをいくつも重ねる事により人間のような深い思考に近づく、早速半年後に迫るラストチャンスを目標にステーションは動き出した、日に日にやせ衰え、脱落者が出る中、作業は順調とは言えなかった、種を運ぶ粘菌の方は第四惑星からのサンプルを少しいじるだけで準備は整っていたが、観測機の方がなかなか言う事を聞いてくれないのだ、例え作れてもどの観測機も短命でバイオ水槽内で息絶えてしまう、何が原因なのか調査する時間もない、そこで補助となる子機を何種類か用意し本体の観測機の不調を感じ取ると不調箇所の調整を行う、子機を水槽内に放し最後の希望となった観測機「製造番号58番」は子機の助けも借りてその姿を成熟させていく、まるでカツオノエボシのようなその姿、四つのカメラ眼、補助の子機の住処となる芝生のような大量の触手、準備は整った、後は観測機にプログラムを入力する
「粘菌を氷の上に植えて」
「失敗してもいいように少数残してバイオ嚢で育てる」
さらに複雑なプログラムが観測機の脳に刺さった端子から送り込まれていく、しかし研究者たちはある一つの可能性に賭けていた
「母星の生き残りがもしかしてここに来るかもしれない」
おそらく生き残った人々は荒廃した母星を捨てこの星に来るであろう、その時のために少しでもテラフォーミングを進める、さらにこの星を見つけやすいようにステーションから電波を出す、そして観測機が「ここだよ」と道案内する、そこで新しいプログラムとして観測機には「ぼくは、ここだよ」という言葉、さらに短い歌など出来るだけ目立つ電波信号を覚えさせる事が提案されその場で通された、解き放たれた観測機は大気圏で家族を作りながら世代交代しつつ粘菌を植え、それを必死に観察していくことだろう、それは研究者たちには出来なかった夢物語、そして極冠の発生開始が観測されたその日、残された6名の研究者により観測機の大気圏投入作業が始まった、頑丈な水槽を大気圏突入ポットへ、子機と観測機が何か騒がしい、気化した麻酔を水槽へ、次に観測機の電波確認のために観測機の電波試験が行われる、騒がしい今が確認に最も良い状態でもしエラーがあったら治せる最後の状態でもある、
「サザッ…ヤ………ザザッ………」
短い音が雑音に混じって何度も鳴り響く
コンピュータによる自動周波数調節が行われる
「ヤダ………」
研究者たちは絶句した
なんと自我が芽生えていた
それは子機も同じだった
「ヤダ………ヤダ………」
徐々にポットに押し込められてゆく観測機
効き始めた麻酔は意識をシャットダウンさせた
今回の最終試験で研究者たちはついにバイオ技術の迷路から自我の発生を発見した、しかし、それを伝えるための人はもう居なくなる、それは記録として、データとして保存される、ステーションの無人化プログラムは最後の一人が押す役目になっている、そしてそれまでは観測機の様子を記録し続けるのだ、
・テラフォーミング期
極冠を拠点とするテラフォーミングが始まる、しかし第四惑星の事もあり観測機はNBC対策が取られていた、例え何か不調があっても次の世代には解決できるような遺伝子組み換えも行っている、むしろこの時期は粘菌たちが一番苦労していた、何しろ極冠が広がっていくかと思えば次は地中に水となって、空中には水蒸気となって消えていくのだ、そのため粘菌はまず地下へ向けて根を伸ばした、これは予想通りに地下の粘土層に突き当たり水分の確保はできた、しかしそれ以上の事は何も起きなかった、粘土層を伝って極冠から少しづつ広がるも熱風により極冠地帯から粘菌は出れずにいた、つまり気候を変えない限り生命はこの極冠にしか生存できないという回答がこの惑星から突きつけられたのだ、観測機やステーションのデータは毎日一歩進んでは一歩吹き飛ばされる粘菌を根気よく記録し続けた、やがてチャンスは訪れた、火山噴火が始まった、まだ人間が居て植物を植えてた頃とは思えない地殻変動が始まろうとしていた、地面は割れ、マグマが地下から吹き出す、空高くぶちまけられたチリはやがて雲よりも高い割合で大気を席巻した、惑星の地表は光を失った、観測機はチリから逃れるため高度をあげており無事だったが更に分厚くなった雲やチリの下で一体粘菌はどうなったのか、自身に搭載されたレーダーなどでしか観測できなくなっていた、ステーションもこの異常事態をデータ通信から察知、すぐに観測機器を極冠へ向けていた、粘菌は組み込まれた葉緑体の光合成が行えぬまま再び発生した極冠にへばりつきながら根をしっかりと地下に下ろして耐えていた、しかし、チリや雲により地表はどんどん寒冷化が始まる、やがて観測機やステーションからこの星でまだ観測されてなかった雨が初めて観測された、火山活動が止まぬ中、雨は降り続けやがて砂や荒涼とした大地に水たまりを作り始めた、やがて水たまりは流れ始め川となった、長い年月と雨、そして火山噴火で湖が生まれた、更に時が流れ地殻変動により海と陸が生まれた、やがて雲は灰色から白に変わり少しずつ晴れ始めた、そこには目を疑うような光景が広がっていた、錆びた鉄のような赤い大地は無く、変わりに光を反射して輝く青い海があった、しか肝心な極冠は海底で粘菌はどこへ行ったのか?観測機は落ち着いた気流に乗って粘菌を探し始めた、まだ大陸はかつての星の面影を残す砂漠の大国、火山活動もまだあっちこっちで小規模ながら続いていた、ステーションも極冠が水没した事から捜索をしているが観測機程の精度はない、やがて観測機はまた粘菌を植える事を前提に大陸の地形を記録し始めた、もちろんまだすべてを探しきった訳ではないため粘菌を植えることはまだだいぶ先である、(書きかけ)
まだ書きかけのため様々な意見も募集中、
他の惑星も設定を順次載せていく予定です、