退院
伸二は病院のベッドの上で目覚めた。
伸二が目を覚ますと同時に、病室のドアがノックされ、ナースがドアを開けて部屋野中に入って来る。
「あっ、起きました?」
ナースは伸二が目を覚ましたことに気づき、笑みを浮かべて声をかける。
伸二は体を起こそうとするが、腹部に痛みが走り、一旦起き上がるのを止めた。
「っ・・・・・・」
その様子を見て、ナースが慌てて伸二の体を押さえる。
「ああ、もう!まだ動いちゃダメですよ!」
「す、すみません」
ナースに怒られ、伸二は小さく謝る。
「それにしても、どうなってるんですか?」
伸二は銃で撃たれた後、彩乃の通報によってやってきた救急車で病院まで搬送された。搬送された伸二は、体の中に残った銃弾を摘出するために手術を受けたのだが、その手術の痕はほぼ治りかけていた。
そのことをナースは不思議に思っていた。
「若いですから・・・・・・アハハ」
「それ、理由になってませんけど?」
伸二のその場で思いついた言い訳を聞いて、ナースは納得していなかったが、深く聞くことは無かった。
「傷もほぼ治っているみたいですし、問題ですね」
伸二が寝ている間も確認はしていたが、念のためナースは伸二の手術痕を確認した。
「それは良かったです・・・・・・そういえば、今日って何日ですか?」
伸二は自分がどれぐらい眠っていたのか分からず、病室には携帯も時計もなく、カレンダーは置いてあったが、それだけでは日付が分からなかったのでナースに聞いた。
「今日は5月15日の水曜日です。氏神さんが病院に運ばれてきてから3日経ってますよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「あっ、そういえばお見舞いの方が来られてましたよ?」
「・・・・・・そうですか」
(心配してるだろうなぁ・・・・・・)
伸二は皆を心配させていると思って心が痛んだ。
「また様子見に来ますね」
ナースが病室を後にして、伸二は病室に一人になった。病院の中は暇で、何もすることが無いので、伸二はベッドの上でボーっとしていた。
昼頃。
伸二の病室のドアが開き、彩乃が入ってきた。
「伸二くん!」
彩乃は伸二が目を覚ましている様子を見ると、安堵したように名前を呼んだ。
「あっ・・・・・・彩乃さん」
「無事で良かった・・・・・・」
彩乃は伸二に駆け寄り、伸二に向けて頭を下げる。
「ごめんなさい、私のせいで」
自分のせいで伸二に怪我をさせてしまったと彩乃は深く反省していた。
「いや、彩乃さんのせいじゃないですよ・・・・・・・彩乃さんが無事で良かったです」
伸二は自分の怪我よりも、彩乃の身が無事を心配していた。
彩乃はベッドの上に腰掛ける。
「ありがとう」
そう言って彩乃は伸二を優しく抱きしめた。
「あの時の伸二くん・・・・・・・凄く格好良かった」
彩乃は伸二を抱きしめながら耳元で囁くように言った。
「あの・・・・・・痛いです」
伸二は彩乃が抱きつかれて、嬉しくない事は無かったが、それより腹部の痛みが強かった。
「あっ、ごめんなさい」
彩乃は伸二から離れ、ベッドから降りて、置いてあるパイプ椅子に腰掛けた。
「んふふ、それにしても伸二くんも怒るのね」
伸二に対して温厚な人と言うイメージを持っていた彩乃は、伸二が怒っている様子が珍しく見えた。
「それはまあ、僕も人間ですからね、怒ったりもしますよ」
「普段もあんな風だったら男らしくて良いのにね~?」
「僕って普段女々しいですか?」
怒っている姿が男らしいと彩乃言われ、伸二は逆に考えると普段女々しいのだろいうか?と思った。
「そうじゃないけど・・・・・・・普段があんな感じでも良いかなーって」
彩乃はそう言ったが、伸二は思った。
(それって怒りっぽい人ってこと?・・・・・・それって良いのかな?)
「・・・・・・はぁ、そうなんですか」
「あっ、そうだ」
彩乃は、伸二が意識を失った後の事を伸二に話した。
伸二が銃で撃たれた後、彩乃の通報により救急車と警察が現場に到着する。伸二は病院に搬送され、彩乃を誘拐した連中は警察に連行された。
当然ながら銃を撃った男の罪は一番重い、銃刀法違反や殺人未遂などその他もろもろ、そのうち裁判が行われる。
伸二も裁判所に行かなくてはならないし、警察の事情聴取なども控えている。伸二は面倒くさいと思いつつも、こればかりは仕方がない。いくら無敵主人公と言え、国家権力には中々逆らえない。
この事件は小さいながらも新聞の記事に載った。
「一つ言わなくちゃいけないことがあって・・・・・・」
彩乃の住むアパートの大家がその事件の載った新聞を見て、彩乃さんに立ち退きを命じた。新聞に彩乃の名前は載っていないが、警察車両、救急車が何台も現場に向かったので、近隣住民が何か事件があったのかと現場に野次馬の用に集まり、その現場に居た彩乃の姿を見て、そこから大家に話が伝わったと考えられる。
大きな町ではなく、有り得ない事ではない、面倒事に巻き込まれたくないと言う大家の気持ちも分からないではないので、彩乃は住んでいたアパートを出た。
そして住むとことが無くなった彩乃は、現在伸二の家に寝泊りしている。彩乃の事を知った京の計らいだ。
「次の家が見つかるまで住んでいてもいい?」
「ああ、そんなことですか・・・・・・・別に構いませんよ」
彩乃が歯切れ悪く言うので、何事かと思えば、伸二にすれば何ら問題の無い事であったので、快く了承した。
「・・・・・・そう?あ、そうだ。京に家の事は聞いたの、だから私も家事はちゃんとするし、何ならお金も出すから」
京達が伸二の家に住まわせてもらっている代わりに、家政婦のような事をしていると、京が彩乃に教えていた。
「いえ、家事だけで十分ですよ・・・・・・じゃあ、これからよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
こういて彩乃は次の家が見つかるまでの間、伸二の家に居候することになった。
「そういえば、彩乃さん今日学校は?」
平日の昼間なのに、彩乃が病院に居る事に伸二は疑問に思った。
「ああ、電話が来たから早退してきたのよ?」
「・・・・・・はぁ、サボリですか?彩乃さんって生徒会長じゃなかったんですか?」
「良いのよ、どうせ会長何てお飾りなんだから」
昼まで無くとも、学校を終わってからでも来れたはずだと、伸二は思ったが、彩乃が心配して来てくれたのだと思うと、あんまり強くは言えなかった。
「・・・・・・京達は?」
伸二は彩乃なら知っているだろうと、京達の事を聞いてみた。
「凄く心配してた・・・・・・叶ちゃん何かお見舞いに来るたびに号泣してたんだから」
「・・・・・・そうですか」
「京は怒ってたみたいだけど?」
彩乃言葉を聞いて、伸二は思い出した。
あの日、京に約束をした事を。
「約束破っちゃいまして・・・・・・」
「んふふ・・・・・・まあ、頑張ってね」
彩乃は、伸二が京に怒られる事になるだろうと思い、伸二にエールを送り、一度帰宅した。
4時頃。
京と叶、そしてあざかの3人が伸二の見舞いに訪れた。
彩乃に、伸二が意識を取り戻した事を聞いていた叶は、病室のドアを開けると真っ先に伸二に抱きついた。
「お兄ちゃん!!!お兄ちゃん・・・・・・お兄ちゃん・・・・・!」
叶がボロボロと涙を流しながら、伸二の事を呼び続けた。
「ごめん・・・・・・叶ちゃん」
伸二は優しく叶の頭を撫でる。
「・・・・・・無事で良かった」
京がムスッとした表情で言った。
「別に私は心配なんかしてないけど」
あざかがいつもの調子でそう言った。
「京もあざかもごめん・・・・・・」
二人にも心配をかけたので、伸二はきちんと謝っておく。
「伸二・・・・・・約束、守らなかったな」
「あーその・・・・・・」
伸二が「ごめん」と言いかけたその口を、京は自分の口で塞いだ。
「お、お姉ちゃん!?」
「お前、何やってんの!?」
京が突然伸二にキスをしたことで、叶とあざかが病室で騒ぎ出す。
「・・・・・・約束守らなかった罰、これで許すから」
伸二は突然の出来事にポカーンとしていた。
「あっ・・・・・・え・・・・・・?」
病室の騒がしさにナースが駆けつけ、4人はこっぴどく叱られて、伸二を残し3人は帰宅した。
伸二が退院するまでは一週間かかった。ほとんど傷は塞がっているものの、銃で撃たれたことから、流石に意識が回復してすぐに、とはいかなかった。
伸二が入院している間の一週間には、京やあざか、彩乃は勿論だが、香奈女や、大輔も伸二の見舞いに駆けつけた。
入院生活は暇だが、毎日代わり代わりに誰かが伸二の見舞いに訪れるので、面会時間内だけは、伸二は暇をすることはなかった。
そして、退院の日、伸二が久々に家に帰宅すると、伸二の家に居候する面々と、叶に誘われた香奈女が、退院祝いを開いてくれ、ちょっとしたパーティのようになり、皆で食事を楽しんだ。
「皆ありがとう。香奈女ちゃんもわざわざ来てくれてありがとうね」
「叶に言われて仕方なくですから」
「ふふ・・・・・・照れちゃってかわいいー!」
叶に言われて仕方なく伸二の退院祝いに参加した香奈女が、照れ隠しをするように言うと、彩乃が香奈女の様子を見て、荒ぶる。
「病院食だったから、退院してからのご飯が結構楽しみだったんだよね」
伸二は病院食の味気なさに飽きていて、退院後の京達が作る料理を楽しみにしていた。
「あ、お兄ちゃん。コレ私が作ったんだよ?」
伸二が美味しそうにご飯を食べている様子を見て、叶は伸二に自分の作った料理を食べるように勧める。
「うん!美味しいよ、ありがとう」
叶が作ったと言う料理を食べて、伸二は素直に美味しいと感想を言い、たまたま隣の席に座っていたので、叶の玉を撫でた。
「ねぇ、伸二くんって叶ちゃんに甘くない?やっぱりロリコン?」
彩乃は伸二が叶に優しくする様子を見て、疑うような目を向ける。
「違いますよ!!!」
伸二は全力で否定した。
「ロリコンって何?」
彩乃と伸二のやり取りを聞いていた叶が、聞き覚えのない言葉に首を傾げる。
「ロリコンっていうのはね、小さくて可愛い女の子が大好きで大好きで仕方ない男の人の事をいうのよ?」
彩乃がニヤニヤと笑みを浮かべ、叶にロリコンの意味を教える。
「お兄ちゃんロリコンなの?」
本当にそうなの?とそんな目で叶が伸二に問いかける。
「違うよ・・・・・・?違うからね?」
「じゃあ、お兄ちゃんは私の事嫌いなの?」
「そんなことないよ、叶ちゃんの事は好きだけど、でも僕が叶ちゃんを好きでも、それがロリコンって事には決してならないから」
「へえ、そうなんだ・・・・・・良かった~!」
叶はロリコンの意味をイマイチ理解できなかったが、伸二が自分の事を好いているという事が分かり、それで満足した。
「彩乃さん、叶ちゃんに変な事教えないでください。叶ちゃんは純粋何ですから・・・・・・」
純粋無垢で大抵のことなら何でも信じてしまう叶に、彩乃が要らない知識を植え付けようとするので、伸二は今後そんなことがないように彩乃に釘を刺した。
「そういう所が甘いって言うんだけどね」
「え?そういうところって?」
伸二が彩乃の言葉を理解出来ず、彩乃は溜息を吐く。
伸二の退院祝いは終始和やかに執り行われた。
(家に人が居るって良いな・・・・・・)
伸二は改めて思った。
翌朝。
(暑い・・・・・・この感覚は・・・・・・またあざかか)
時折寝ぼけて部屋を間違え、伸二のベッドに潜り込むあざかが、今日もまた布団に入ってきたのかと思い、伸二は布団をどけてみた。
「うわっ!彩乃さん!?」
伸二は焦り始めた。
あざかと違って、彩乃は高校生とは思えない体。つまり胸が大きい。それに加え、初夏だからと言って、通気性が良いどころか、ほぼ裸のような彩乃の寝巻き姿に伸二は戸惑う。
「彩乃さん、彩乃さん起きてくださいよー・・・・・・本当お願いしますから」
伸二も高校生と言う血気盛んな時期なので、色々とまずかった。
さっさと起きてもらおうと、伸二は彩乃の体を揺すって起こそうとするが、彩乃は妙にエロい吐息を漏らすだけで一向に起きる気配がない。
(あー・・・・・・もう、何で・・・・・・)
伸二はどうして良いか分からず、ひたすら彩乃を起こそうと体を揺らすが、やはりエロい吐息を漏らすだけで、起きない。
最初は、その吐息に鼓動が高鳴ったのだが、体を揺らすたびに、「んっ」や「んんー・・・・・・」と声を出すので、伸二は少し面白くなってきた。
「何か、面白いな、この生き物」
伸二はちょっとした好奇心から、彩乃の頬をツンとつついた。
「ぷにぷにしてる・・・・・・何かこうして見ると可愛いな・・・・・・」
普段大人っぽい彩乃が、こうして黙って寝ていると可愛いものだなと、伸二はそんな事を呟いた。
伸二はふと時計を見ると、そろそろ本当に起きてもらわないと学校に遅れてしまう時間になっていたので、伸二は慌てる。
「ちょっと彩乃さん!そろそろ起きてもらわないと・・・・・・」
伸二は先ほどより強めに、彩乃の体を揺さぶると。
「ん?そう?じゃあ起きる~!」
彩乃は途端に目を開けると、今まで寝たふりをしていたかのように、直様体を起こす。
「えっ・・・・・・もしかして起きてたんですか?」
「伸二くんが起きる少しまえからね、面白そうだから寝たふりしてたの」
「・・・・・・」
「伸二くんに可愛いって言われちゃった!」
「はぁ・・・・・・なんですか?あなたも寝相悪いんですか?」
「ううん、ビックリさせようと忍び込んでたんだけどいつの間にか寝ちゃったの」
「そうですかっ!!!」
伸二は「しっしっ!」と猫を追い払うかのように彩乃を部屋から出て行くように追い払う。
本当にこの人は仕方ない人だなと、伸二が彩乃に呆れていると、部屋から出ようしていた彩乃が足を止めて振り返る。
「そういえば・・・・・・あなたもってことは他にも来るの?」
「えっ、あ、はい・・・・・・たまにあざかが寝ぼけて」
「へぇ?」
彩乃が意味深に言い、それ以上は何も言わずに伸二の部屋から出て行った。
「・・・・・・早く準備しないと」
彩乃の言葉を大して気にすることなく、伸二は着替えを始める。
伸二に取っては一週間ぶりの学校。
伸二が教室に入ると、何人かのクラスメイトが伸二を心配して話しかけてきた。
何かの原因で伸二が入院をしたということをクラスメイト達は知ってはいたが、例の事件に伸二が関わっていることは知らない。しかし、知っている生徒もいる。ただ、それはあくまでも噂の範囲内だった。
「おっす!おかえり~!」
伸二が席に座ると、伸二の前の席に座る大輔が振り返っていつもの調子でそう言った。
「うん、ただいま、一週間って結構短いような気がするけど、何か久しぶりって感じだよ」
「一週間だろ?大げさだっての・・・・・・お、そうだ。ノート取っておいてやったぞ」
そう言って大輔は、伸二にノートを手渡す。
袴大輔という人間は、馬鹿のくせに勉強はできる。それに加え、几帳面でノートの写し方など、丁寧で、字も綺麗。
あざかは字が汚いし、雑なので見にくい。
京は授業に付いていくのがやっとで、日頃彩乃に教えてもらっている。
こういう面では京とあざかには期待できないので、伸二は大いに助かった。
「ありがとう、助かるよ。今度学食でも奢るよ」
「おい!気前良いな!」
(・・・・・・卑しい顔、やっぱりバカだ)
と、伸二は思ったのだが、それ以上に、こういうことをこっちから言わなければ見返りを求めずにしてくれる大輔の事を改めて良い奴だと思った。
昼休み。
今日、伸二は弁当を持ってきていなかった。氏神家では週間に2回、お弁当ではなく各自自分で昼食を決める日がある。
皆、そういう日は大体学食やパンを買うようだ。
伸二は今度奢る言ったが、たまたま今日は弁当じゃない日だったの、さっそく伸二は大輔に学食を奢ってあげることにした。
最近は大体いつものメンバー。伸二、京姉妹、彩乃、あざか、香奈女ちゃんとで、学校の中庭などで一緒に昼食食べることが多い。
伸二は大輔と久々に二人でご飯を食べることになった。
この学校の学食は結構種類があって、牛チゲ豆腐定食や牛すじ肉シチューなど、そこら辺の定食屋より、種類が豊富。
「っしゃ!!!俺ハンバーグ定食な!」
ハンバーグ定食はハンバーグにサラダ、味噌汁、お米、小皿に漬物のセット。
育ち盛りの学生のために結構なボリュームで値段は450円。
ちなみに定食はご飯おかわり自由である。
「はいはい・・・・・・じゃあ、僕はカレーでも食べようかな」
伸二は特にお気に入りのメニューがあるわけでもないので、無難にカレーを頼むことにした。
二人して、頼んだ料理を受け取り、席に座る。
「いやー、悪いねー!いただきます!!!」
「はいはい・・・・・・いただきます」
伸二は不味くもなく、これと言って美味しいというわけでも無い普通のカレーを口に運んだ。カレーだけでなく、ここの学食は基本的にどれも味は普通。
「そういえばこうして二人で学食は久しぶりだよね」
「ああ、そうだな」
伸二はいつものメンバーで食べているし、そこに大輔が参加することは有り得ない。大輔は基本的にサッカー部の連中と昼食を食べている。
「サッカーの方はどう?」
「まあまあだな、次の土曜試合だぞ。俺も出るし、暇なら見に来いよ?」
「土曜か・・・・・・うん、特に用事も無いし、たまには応援しに行こうかな」
「っしゃ!俺の格好良さをお前に見せつけてしんぜよう!ふははは!!!」
大輔が馬鹿丸出しで笑っていると。
「何だ、お前らも学食かよ」
あざかがプレートを持って、二人の元へと歩いてきた。
「うーっす、花里」
「一緒に食べようよ」
伸二にそう言われ、あざかは伸二の隣に座った。
「何か、3人で食べるって久しぶりだよなー」
あざかが伸二と大輔の顔を見て言った。
「丁度僕らもそんな話してたんだよ」
あざかは、自分が持ってきた大輔より量の多いボリューム満点な定食を食べ始める。
「花里お前食べ過ぎだろ!」
「本当だよ、大丈夫なの?・・・・・・太るよ?」
伸二と大輔は、体育会系部活に入っている育ち盛りの男ぐらいしか頼みそうにないボリューム満点の定食に二人して突っ込む。
「うっさい!私はいくら食べても太らないの!」
「そっか」
本人が良いと言うし、これ以上何か言ったら怒ると思って、伸二と大輔はそれ以上定食のことは口にしなかった。
「あ、そういえば大輔が土曜サッカーの試合があるんだって、あざかも見に行く?」
「へえ、そうなんだ?んー、伸二が行くなら私も行こうかな」
「そうそうか!お前らそんなに俺の活躍をみたいか?」
伸二とあざかが応援に駆けつけるということになって嬉しくなったのか、大輔は調子に乗り始める。
「伸二、やっぱり行くのやめようか?」
「そうだね、土曜日は急に都合が悪くなった」
「う、うそだって!来てください!お願いします!!!」
伸二とあざかが冗談で応援に行かないと言うと、大輔は必死に二人に頭を下げる。
「まあ、そこまで言うならしかないなー」
「うん、行ってあげないこともない」
「あざーっす!!!」
((馬鹿だ・・・・・・))
二人して、大輔を心の中で馬鹿にした。
「おい、伸二」
突然あざかが伸二の顔を見て言った。
「ん?どうしたの?」
「口元にカレーついてる」
あざかは持っていたハンカチで伸二の口周りに付いたカレーを拭き取った。
「まったく・・・・・・伸二ってたまに子供なんだから」
「あっ、ごめん」
その様子を見て大輔が不思議そうに首を傾げた。
「お前らさ・・・・・・何か前より仲良くねえ?」
「そうかな?」
伸二は大輔が言うように仲が良くなったかどか分からなかったが。
「はぁ!?全然そんなことないし!!!」
あざかは全力で否定した。
「ふーん、そっか・・・・・・」
大輔は腑に落ちないといった表情で言った。
3人は昼食を食べ終わっても昼休みが終わるまで話し続けた。




