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氏神物語  作者: 斧竹石
8/12

日曜日

彩乃と香奈女が伸二の家に遊びに来た日の翌日、日曜日。


京と彩乃は昨日言っていた通り、二人で買い物に行くので朝食を食べると、準備して出かけていった。


叶も香奈女の家に遊びに行くことになり、二人共夜まで帰らない。


という事で、伸二の家にはあざかと伸二の二人となった。


伸二は部屋でパソコンに向かい、あざかは家事をしていた。


一通り家事を終わらせたあざかが、お昼ご飯はどうしようかと、伸二の部屋に訪れる。


「なぁ、昼メシどうする?」


「んー・・・・・・そうだね」


伸二は料理が出来ない。あざかは出来るが、冷蔵庫に何も入っていない。


「僕らも外に行って食べようか」


「おっ!」


伸二の思わぬ発言にあざかは少しテンションが上がる。


伸二の家は少し郊外にあり、何か食べようにもお店がない。なので、電車に乗って、以前伸二が京達の衣類などを買ったデパートがある駅まで出ることにした。


「あざかは何が食べたい?」


町中を歩きながら、伸二があざかに聞いた。


「そうだなぁ・・・・・・」


(あれ?・・・・・・こ、これってもしかしてデート?)


ふとそんな事を考えると、あざかは急に顔が熱くなった。


「どうしたの?・・・・・・って、顔赤いけど大丈夫?あ、もしかしてアレ?」


「あ、アレってなんだよ!?」


自分の考えている事がバレたのかと思い、あざかは急に挙動不審になる。


「昨日あざかがお風呂上りにのぼせてソファに倒れてたでしょ?もしかして風邪ひいたんじゃないのかなーって、それなら無理せず・・・・・・」


そんなあざかの考えを知らず、伸二は本当に風邪を引いて顔が赤いのではないかと、心配そうにあざかの顔を覗き見る。


「ち、違う!これはそういうのじゃないから!」


「そう?それならいいけど」


「あ、伸二!あそこ行こうぜ!あそこ!」


あざかがある一軒のお店を見て、指を指す。


そこは、近頃流行りのハンバーガーの専門店。TVでも何度か取り上げられている。


「ここ一回来てみたかったんだよなー」


「へぇ、ハンバーガー屋さんか・・・・・・有名なの?」


「知らないの?最近流行ってるんだけど」


「僕テレビあんまり見ないからね」


伸二は流行などには疎い。


あざかがこの店が良いと言い、伸二も別にハンバーガーが嫌いというわけでもないので、取り敢えずこの店で昼食を取ることにした。


伸二はテリヤキハンバーガー、あざかはエビカツバーガーを頼んだ。


流石に有名になるぐらいで、味は美味しい。


ふと、伸二はあざかを見ると、美味しそうにエビカツハンバーガーを頬張っている。


(エビカツも食べてみたいな・・・・・・)


「ねぇ、僕のもあげるからさ、一口食べさせてよ」


「ん、いいよ」


伸二はあざかのエビカツバーガーを一口頬張る。


(・・・・・・うん、エビカツも美味しいな)


「ほら、食べていいよ」


自分も一口貰ったので、伸二はあざかに自分の食べかけていたテリヤキバーガーを差し出す。


「うん、それじゃあ・・・・・・」


(コレって関節キス・・・・・・?あー!考えるだけで顔が・・・・・・)


そんな事を一人考え、あざかは顔が赤くなっていた。


「ん?いらないの?」


伸二はあざかがハンバーガーを食べようとしないので、要らないのかと思って聞いた。


「あ、違う!食べる!食べるからよこせ!」


あざかは「ガブッ」とテリヤキバーガーを頬張る。


「・・・・・・ん、美味い」


あざかはさっきまでの事は無かったかのようにハンバーガーの美味しさに浸っていた。


二人は昼食を終えると、CDショップに行ったりゲームセンターに行ったりと、日曜日を満喫していた。


「ちょ、ちょっと休憩させて・・・・・・」


遊びまわり、伸二は疲れ果てた。


「ったく、だらしないなぁ~」


伸二が休憩をしたいと言い、丁度ベンチを見つけたので、座って休憩することにした。


「飲み物でも買ってきてやるよ」


伸二は動くのも面倒くさそうなので、あざかは一人飲み物を買いに行こうとする。


「あ、僕もいくよ」


あざかはそういうが、男が女の子に飲み物を買いに行かせるのもどうかと思って、引き留めて自分も一緒に行こうとするが。


「いいよ、伸二は座って待ってろよ」


あざかは伸二が立ち上がろうとするにも関わらず、一人で走っていく。


しばらくすると、あざかが飲み物を二つ買って帰って来た。


「悪いね」


「良いって」


あざかは伸二に飲み物を渡すと、伸二のすぐ隣に座った。


「そういえばこうやって二人で出かけるのは初めてだよね」


「あぁ、そうだなぁ。昔は大輔と伸二と私で遊ぶことは良くあったけど・・・・・・・二人ってなかったな」


伸二もあざかと同じように思っていたようだ。


「たまにはこういうのも良いよね」


「ま、また・・・・・・二人でどっか行こうよ・・・・・・」


あざかは少し勇気を出して、伸二にそう告げた。


「うん、良いよ」


伸二はあざかの二人でと言う意味を理解していない、2人っきりで出かけるということではなく、またどこかに遊びに行こうと、単純にそういう意味だと思って、答えた。


(・・・・・・?あれって・・・・・・)


伸二は遠目に見知った人物を見つけた。


「あそこにいるのって京と彩乃さんじゃない?」


伸二はあざかに分かるように二人に指を指す。


「あ、ホントだ・・・・・・でもあれって・・・・・・」


あざかは彩乃と京の様子がおかしい事に気づき、良く見ると、二人組の男に付きまとわれているように見えた。


「ナンパかな?あの二人美人だからね」


「行かなくてもいいのかよ?」


伸二はそうでもなかったが、あざかは二人がナンパされているのを見て、心配そうに言った。


「京はちゃんとしてるから大丈夫だよ・・・・・・それに彩乃さんもいるからね」


「そうかな?」


伸二はそういうが、あざかは少し心配だった。


何かあれば、駆け付けようとは思ったが、しばらく様子を見ることにした。


こんな公の場で何も起きないだろうと、甘い考えでいた。


後で思えばこの時さっさとあいつらを追い払っていれば、と伸二は後に後悔する。


当の二人はというと。


「ねぇ、ちょっと待って、俺らと遊ぼうよ?」


「そうそう、ちょっと遊ぶだけじゃん?何でも奢ってあげるから」


二人の男は必死に京と彩乃を誘う。


京は初めてナンパされたということもあり、あたふたしていた。


「彩乃、こいつらなんなんだ?」


「あぁ、ナンパよ、無視してたら大丈夫だから」


「・・・・・・そうか」


彩乃はこういう経験が何度もあるのか、至って冷静で、心配そうにする京を宥める。


「ねえ、遊ぼうよ?ちょっとだけだから、ね?」


彩乃と京は二人組の男を無視して歩き続けるが、男たちはしつこく二人に付きまとう。


しばらくしても一向に諦めない二人に、イライラが限界に来た彩乃がキレる。


「もう!あんたらみたいなのに興味ないから!付いて来ないでくれる!?」


「そうつれない事言わないでさ」


大人しくしていた京の方を狙って、男の一人が京の手を掴もうとする。


「触るな!」


京は手を掴もうとしたを男を突き飛ばした。


「ってぇなあ!何すんだよ!」


京に突き飛ばされた男は頭に血が上り、京に迫る。


「パシンッ!」


彩乃は京に近寄ってきた男にビンタした。


「これ以上つきまとったら警察呼ぶわよ!」


彩乃はカバンから携帯を取り出し、男達に見せつける。


「ちっ」


男達は彩乃が携帯を取り出したことと、周りが騒ぎ立てていたので、その場から逃げていった。


「京、大丈夫?」


「ああ・・・・・・ありがとう、彩乃」


「・・・・・・はぁ、そろそろ帰りましょうか」


また変な連中に付きまとわれたくもないので、彩乃達は買い物を早めに切り上げ、今日は帰ることにした。



一部始終を見ていた伸二とあざか。


「大丈夫だったみたいだね」


「めっちゃかっこよかったな!」


あざかは彩乃の姿を見て、少し高揚していた。


「僕らもそろそろ帰ろうか?」


「そうだな」


二人も一通り遊びまわったので、彩乃達と同様、家に帰ることにした。


伸二はあざかと遊びに来たものの、帰る家は一緒で、少し変な感じがした。


伸二達が家に帰ると、先に帰ったはずの京はまだ帰ってきてなかった。


夕飯の買い物でもしているのかな、と気にせず、伸二は自分の部屋に戻って一息着いたその途端。


伸二の携帯が鳴った。


「もしも・・・・・・」


「し、伸二!彩乃が!」


携帯から聞こえる京の声は荒立っていた。


「京、ちょっと落ち着いて。彩乃さんがどうしたの?」


何事かと、思いつつも、京を落ち着かせようと、伸二は冷静に言葉をかける。


「落ち着いてる場合じゃない!彩乃が連れて行かれた!」


「連れて行かれた!?・・・・・・今どこにいるの?」


彩乃が連れていかれたと聞いて、伸二も冷静でいられなくなる。


「今彩乃を連れて行った奴を追ってる・・・・・・場所は・・・・・・」


多分あの後、昼間の連中につけられていたのだろう。


京は男達を追い、町はずれの廃工場まで来ていて、居場所を聞いた伸二は走って駆けつけた。


「伸二!」


京は伸二の顔を見て少しだけ安堵の表情を浮かべる。


「京、彩乃さんは?」


「そこの工場の中に連れて行かれた」


京が一つの廃れた建物を指さして言った。


「京は家に戻ってあざかと待ってて、すぐ戻るから」


「・・・・・・でも」


「お願い。京に怪我させたくないから・・・・・・」


「分かった。約束だからな?すぐ帰ってこいよ」


伸二は京を家に帰らせ、廃工場へ向かう。


伸二は鍵のかかった工場の扉を蹴破って中に入る。


中には京達をナンパしていた二人の男と、その他にも複数の男達がいた。


彩乃は口にガムテープを張られ、手と足もガムテープでグルグル巻きにして縛られていた。


「ひんひふん!!!」


彩乃が伸二の姿を見て叫ぶ。


「おい!うるせぇぞ!」


男が彩乃の腹を蹴って黙らせる。


「お前・・・・・・!」


目の前で彩乃が蹴られたことに伸二は怒りを抑えきれず、男に殴りかかろうとする。


「まぁ待てよ」


と、この男達をまとめているであろう、見るからに親玉っぽい男が伸二に向けて言う。


「お前誰だ?」


「・・・・・・」


伸二は男の言葉を聞かず、彩乃に近寄ろうとすると、男が彩乃にナイフを向ける。


「だから、ちょっと待てって言ってんだろ?」


「んー!!!んー!!!」


ナイフを向けられた彩乃が唸ってジタバタと体を動かすが、身動きが出来ない。


「こいつ俺にビンタして恥かかせてくれたんだよ!・・・・・・あー、痛かったなぁ」


男は自分のの頬を触りながら笑みを浮かべる


「それが何だ?そっちが悪いんだろ?」


「ちょっと声かけただけぜ?叩くことないだろ?」


「言うことはそれだけか・・・・・・?」


「はぁ?お前この状況見て自分の立場がまだ分かんねえの?」


伸二は男の言葉などどうでも良く、ふと落ちていた石を拾った。


「何してんだよ?」


男が首をかしげていると、伸二は思いっきりナイフを突きつけていた男の手に向かって石を投げた。


石は見事に男の手に命中し、男はナイフを地面に落とす。


「ってぇ!」


相手が気を反らし、慌ててナイフを拾おうとしたその瞬間に、伸二はその男の間合いに移動し男に蹴りを居れた。


伸二に蹴られた男が倒れ込み、その様子を見て、周りの連中が伸二に群がる。


「てめぇ!コラァアアア!!!!!!」


怒り狂った男達とは逆に、伸二は無言で、冷静に次々と男達を倒していく。


男が次々に倒れていき、最後に彩乃を蹴った男の元に向かう。


「彩乃さんの分だ」


「ひぃいいい!」


伸二は倒れているその男の腹をめがけて思いっきり蹴りを入れた。


「ぐはっ!!」


男は腹を蹴られ、口から血を吐く。


(まあ・・・・・・死なないだろう・・・・・・多分)


伸二は男を尻目に彩乃に駆け寄る。


「大丈夫ですか、彩乃さん?」


伸二は彩乃のガムテープを外す。


「それって貞操って意味で?」


伸二はお腹を蹴られていた事を心配していたが、彩乃は伸二をからかうように言った。


「まったく、こんな時まで・・・・・・」


伸二はこんな時まで悪戯心を忘れない彩乃に少し呆れる。


「ふふ・・・・・・ありがとう」


「帰りましょう。今頃京が心配して思いますし」


「えぇそうね」


伸二と彩乃が廃工場を出ようとしたその時。


「死ねぇえええ!!!」


振り返ると、どこかに隠れていたのか、突然の連中の親玉が伸二のすぐ後ろに来ていて、隠し持っていた銃で伸二を撃った。


「っ・・・・・・!」


伸二は銃弾を避ける事も出来ず、そのまま銃弾は伸二の腹に吸い込まれた。


伸二の腹からダラダラと血が溢れ出る。


「くそっ・・・・・・!」


伸二は激痛の中、力を振り絞って男をを殴り飛ばした。


伸二と、男がその場に倒れる。


「伸二くん!大丈夫!?」


消え行く意識の中、彩乃の声が脳に響いてきた。


「救急車・・・・・・呼んでください・・・・・・」


伸二にそう言われ、彩乃は慌てて携帯を取り出しすぐに救急車を呼ぶ。


彩乃が取り乱し、声を荒立てる中、伸二は意識を失った。


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